【僕の主催した新しいバトル形式】
一応断っておくが、前章は半分は冗談である。頭をやわらかく、多角的に物事をとらえるために書いた。
さて、公平性の確保のやり方には、大きく二種類あることを述べた。
確率的公平性と真の公平性である。
確率的公平性という範疇で、本人たちの意思の相違などを利用し、かけひきを使うやり方もあると前回、僭越ながら、僕の改革案を紹介した。
ここでは、僕が実際に芸人を集めて主催した新しいバトルのやり方を紹介しよう。
僕の主催したバトルは【理不尽ネタバトル“リー夫人”】というものである。
ルールは、毎回少しずつ主催者の僕の思惑や気分によって変わるのである。
まずは、このイベントの立ち上げ、第一回目のルールから。
普通にお客さんに投票用紙を配り、面白いと感じた芸人5組に◯をつけてもらう。
普通のバトルでは、その◯の数を集計して、その数の多寡により優勝者が決まるのだが、この理不尽ネタバトル“リー夫人”はそうではない。
エンディングで、まずは普通に◯の数のみの集計で優勝者を発表する。
そのあと、突然MCの僕がこう言いはなつ。
「えー、今のは、かりそめの優勝者です。
お客さんをたくさん呼んでこそ、お笑いの舞台というものは成り立ちます。
今日は、お客さんが投票した◯の数に、それぞれの芸人が今日のライブでお客さんを呼んだ数をかけます!!
そのポイントが多い芸人の優勝です!」
つまり、受付で、お客さんに「誰を観に来ましたか?」と聞き、それぞれのコンビのファンの数をメモしておき、当日の◯の数にそれをかけ算するのだ。
ライブの立ち上げ時には、集客がほしい。
そこで、僕は、第一回はこの方式にした。
芸人には、裏ではちゃんとそれを発表しておいた。そうすることで、芸人は、頑張ってお客さんを呼んでくれるという寸法である。
これは、大当たり。
特に、優勝したと思ったのに、人気がないから逆転された芸人は、舞台上で暴れてくれる(笑)。
その姿を主催の僕は、ドSな気分で楽しむのだ。
お金のことで、もめたくないので、優勝者に対する賞金はお客さんには何も言わずに、実際の票数のほうの優勝者に渡していた。
ここらへんの筋論もしっかりしておくのがポイントなのである。
理不尽ネタバトル“リー夫人”の良さは、色々な主催者の意向を調整できることにある。
第一回は、お客さんを呼ばないといけないから、【票数】×【お客さんを呼んだ人数】にした。
しかし、ここから回を重ねるごとに、色んなノリができるのである。
「若いやつは、人気あるんやから!勝って当たり前じゃ!!今日は、芸歴長いオッサンたちが有利な大会にする!」
とエンディングで僕が豪語した回。
この回は【票数】×【持っている持病の数】で優勝者を決めた。
僕は選手としても出ていたので、「自分が優勝したいだけやんけ!」と罵られるようなノリが実現できる。
こういったノリができるのは、実際に渡す賞金はお客さんの票数のみから計算した真の優勝者に渡るところである。ノリの優勝者と真の優勝者をちゃんと分けていた。
「最近!顔ファンばっかりのミーハーなクソみたいなライブになってると、自分で感じる!だから、もう怒った!!」
とエンディングで叫んだ回の“リー夫人”
この時は、下記のルール。
(お客さんの票数)÷(その芸人の名前で当日入ったお客さんの数)で優勝者が決まる。
こんな理不尽なことがあるだろうか。
第一回で、お客さんを呼んだ数をかけ算した同じ大会で、しばらく回を重ねれば、今度は割り算に転ずるのである。
読者のみなさんに分かっていただきたいのは、理不尽を楽しめるのは、本当の公平性について、突き詰めて考えたことがあるからである。
このライブは最高だった。
お客さんも多く、出演者も楽しめた。
そして、何より普通にネタを磨ける。
他のノリは、あくまでも他のノリとして、分離されている点が、手前味噌ではあるが優れているライブなのである。
ずっと続けてやりたかったが、当時、僕にネタ作家の仕事や、他に自分がやりたいことが増えすぎたため、いつの間にか、やらなくなってしまったのである。
このライブには、フェロモンが足りない!などと思えば、【票数】×【エッチの経験人数】などにしても良い。
芸人側で、そんなの答えたくない、などの意見が出ればこちらで勝手に決めつける、などのノリもできる。
いいと思うのだけれど、いかがだろうか。
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