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4か月だけの出家

1.       はじめに
 本レポートの目的は、東南アジア内陸部に伝わった仏教の特徴について論じることにある。特徴の一つである「一時出家」について考察した結果、一時出家は過剰なメリトクラシーを是正するということが明らかになった。本レポートの構成は以下のとおりである。第2節では、一時出家について論じる。第3節では、一時出家の意義について述べる。第4節では、一時出家とメリトクラシーについて論じる。第5節ではまとめについて論じる。

2.       一時出家について
 タイ仏教の特徴の一つに「一時出家」がある。一時出家とは、雨安居期(7-10月)に修行を行うことである。修行中は戒律を守って過ごし、托鉢、瞑想、内省観察を通じて執着を離れることを目指す。ほとんどの人は俗世に還ってくる。こうした、出家経験は社会的に評価される。

3.       一時出家の意義
 この節では、一時出家の社会的意義を考える。つまり、一時出家は社会にどのような影響を与えているのかを考察する。まず、ポジティブな影響は国民の精神的成熟である。具体的に言うと、修行の前には髪や眉をすべてそり、ひとみなおなじという教訓を学ぶ。修行中にもお布施をもらうなどして、自分が他人に活かされているという実感を持つ。仏教的な観点からみると、他人に活かされていると認識することは好ましくない。
 
 しかし、短期間の出家では、執着を離れることを目指すものの、俗的な感情は残っていると考えられる。したがって、社会的観点で考えたときに、出家者は他人の存在を強く感じるはずである。こうした経験から得られるものは、社会の中での自分という認識である。この認識は、自分が欲しいものを独占し、テイクすることだけを考える子供の認識とは対極にある。つまり、一時出家という経験をすることで、大人としてふさわしい認識を持つことができる。社会の中で他人に感謝し、他人に何かを与える重要性に気づくことができるのだ。ネガティブな影響は、毎年10万人が経済活動に不参加になるため、経済にとっては好ましくない。しかし、精神的成熟に比べれば、安く済むといえる。
 

4.       一時出家とメリトクラシー
 メリトクラシー(能力主義)とは、能力を重視して、人を評価することである。近年、能力主義の程度がはなはだしくなり、格差が拡大するという問題が浮上している。このメリトクラシーと一時出家の関係について考察する。
 一時出家はメリトクラシーの行き過ぎを是正する効果がある。なぜなら、一時出家は国民に精神的成熟をもたらすからだ。一時出家で学ぶ、人はみな同じという考えや、他人に活かされるという経験は、自分は自らの努力のみでのし上がったという能力主義的思考を打ち破ることができる。講義の動画にもあった、お布施として数十万円を寄付した人も、宗教的な意思だけでなく、反能力主義的な思考に基づいて行動したと考えられる。

5.       さいごに
 本レポートでは、一時出家の特徴と、メリトクラシーとの関係について考察した。その結果、一時出家はメリトクラシーの行き過ぎを是正することが明らかになった。

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