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東京オリンピックの開会式・閉会式をPR視点で読み解く、個の時代に圧倒的に欠けていた「倫理的・人道的に、大きな絵を描ける」人材

東京オリンピック2020が終わった。
本当にいろいろあったオリンピックだった。
もう皆さん、忘れているかもしれないエンブレム騒動、国立競技場建設問題、マラソン会場、そしてコロナでの1年延期。さらに組織委員長交代。こんなにいろいろあるオリンピックはかつてないだろう。

「個」の声に翻弄された、東京オリンピック

そしてこれらの多くは、SNSが発達し、「個」の声が大きなうねりとして、重要視されてきたことにも起因する。なにぶん、今までは「圧倒的に優位な立場にいる組織」が、全てを決め、仕切ってきた。それに異論を言う人はいても、声は届かなかった。

その流れが崩れている。「圧倒的に優位な立場にいる組織」や「圧倒的に優位な立場にいる個人」が、現代にいてもなお、旧来的考えのままで全てが仕切れると思っている。そして、最近特に重要視されている「透明性」「平等(Equity)」「倫理」「環境」など、SDGs的考えをお飾りだと思いすぎている。ここに全ての綻びがあると思う。お飾りだと思っていたのに、思っていた以上に声が大きかった。抑えられると思っていたのに、抑えきれなかった。そして全てがグタグタのまま、指導者不明のまま、進んでしまった。これが真相だろう。

全体のストーリーと統一感が見えない開会式・閉会式

オリンピックの開会式も閉会式も、いくつか「いい」と思えるものはあった。何人かの「個」が素晴らしいパフォーマンスを披露した。そして、いくつかのプロジェクトは機能していた。でも、全体的に「ストーリー」がなく、何を言いたいのかが全くわからなかった。

今でも思う。
「オリンピックの開会式・閉会式という、世界の人たちが見ている場面で何を伝えたかったのだろう・・・・」

医療従事者に感謝を伝えるために、参加してもらうことはいいだろう。でももっと、伝え方はあったのではないか。全世界が同じ困難に直面するという機会はあまりない。だからこそ、全世界の人の心を揺さぶる方法はもっとあったのではないか。

「個」が活躍する時代だからこそ、大きな絵を描ける人材が必要

PR的に考えると、全ての戦略を描く時に「透明性」「公平性(Equity)」「倫理」「環境」を無視することはもはやありえない。PR的でなくても、今、これを意識していない企業はどこかで綻びがでてくると思う。まずこれをベースに、当たり前のこととして戦略を構築する。この、ベースを、「当たり前のこと」と認識している人が少なかった。ここを、根本に抑えながら、何を伝えていきたいかの大きな絵、ストーリーを描ける人、そしてストーリーを描きながら、「圧倒的に優位な立場にいる組織」に対し、きちんと意見を言える人がいなかった。この「圧倒的優位な立場にいる組織に、きちんと意見できる人」というところはかなり大きなポイントだろう。組織におもねっているだけではなく、ベストを作りたい、これは譲れないというアーティスト的思想も、いいものを作っていくためには非常に重要だからだ。

個人的にも、携わっているプロジェクトにいろんな意見を入れた結果、「全体がぼやけた」「何を言いたいのかわからなくなった」ということは往々にしてある。だからこそ、「大きな絵を描きつつ、きちんと意見を言える人材、ブレをチェックできる人材」が非常に重要なのだ。

良くも悪くも、個の時代に対応できずに、分断が見られたなと思う大会だった。この分断は、もっと広がっていくだろう。そしてこれからももっと「個」の力は増していく。それはSNS的な発言だけではない。一人の「個」でパフォーマンスを上げていく人はもっと増えていく。

だからこそこれからの社会は、「個をまとめあげ、大きな絵を描ける人」が必要だ。そしてその人材は、今をつぶさに観察し、「透明性」「平等性(Equity)」「倫理」「環境」をベースに大きな絵を描ける人にほかならないと思う。

いくつか思うところを述べてきたが、オリンピックが開催されるかされないのか、不明確な中で、努力を重ねてきたアスリートたちの頑張りに、毎日心を動かされたことは確かだ。アスリート目線でも、一年延期と、オリンピック反対の世論を背に、努力することは大変なことだと思う。喜びが少ないこのコロナ禍に、心震える瞬間を見せてくれたアスリートの方々には本当に感謝を示したい。


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