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シビックテックとは文化である

この記事は、CivicTech & GovTechアドベントカレンダーの8日目の記事です。

今年の10月で、Code for Japan は10周年を迎えました。先日行ったシビックテックの文化祭、Code for Japan Summit 2023 には300名以上の方に来場いただき、オンライン視聴も200人を越え、本当に多くの人に楽しんでいただけました。(Youtube で録画を閲覧できます)

私自身も、久しぶりの皆さんや、初めましての皆さんにお会いできて本当に楽しかったです。Code for Japanを立ち上げて10年、あっという間だったような、長かったような…さまざまな思いが交錯します。この10年は一瞬でも関わった全ての人の力で成り立っています。大変感謝しております。

Code for Japan のロゴが入ったケーキ
ケーキでお祝いしました

サミットの最後のスピーチで、シビックテックとは文化である、という話をさせていただいたので、このブログでは補足も含めて記しておきたいと思います。

シビックテックとは文化であり、育てるものだ

今日、私たちシビックテックコミュニティが共有しているのは、ただの技術やアイデアではありません。これは文化です。シビックテックは、世界中で異なる形をとり、それぞれの国の文化や価値観に根ざしています。これは単なるビジネスモデルではなく、私たちがともにに築き上げ、育てていくものです。

国ごとに、シビックテックのあり方は違います。その場所ごとに、それぞれ全く違う営みがあります。それぞれ全てが尊く、正解はありません。

文化とは、トップダウンでは生まれず、さまざまな、自主的なボトムアップの活動から生まれます。そこには、ビジネスモデルなどの打算的なことよりも、ただ、やりたいからやった、という原始的な感情からの活動が多いです。

その「やりたい」「作りたい」という思いが、色んな反応を生み出し、偶然にも社会を変える力になっていきます。「こういったら上手く行った」というのは全て後付けです。上手くいくかどうかは運でしかない。でも、文化があれば、とにかく手数が増える。プラクティスが生まれ、共有されていく。そこから、上手くいく事例がでてくるのです。

文化を作るには、無名の人たちの色んな活動が必要です。やりたいからやる。楽しいからやる。義憤に駆られたからやる。仕事だからやる。やらざるを得ない環境だからやる。モチベーションは様々ですが、色々な人たちの行動の積み重ねが文化を作ります。

サッカー文化との比較

これは、例えばサッカー文化に当てはめてみると面白いかもしれません。世界的にルールが共有され、楽しんで活動する子供たちがいて、それを支える大人たちがいて、活躍の機会があって、安心して活動できる基盤があって、一緒にゴールを目指す仲間たちがいて、地域ごとにクラブハウスがある。スーパースターやロールモデルもある。

クラブハウスは地元の人々によって支えられ、コミュニティの結束を強める場所でもあります。地域のサッカーチームがクラブハウスを拠点として活動することで、地域の誇りや絆が深まります。

活動においても、ユース、J2、J1などの色々なステージがあります。これらは、若手選手の育成に役立っています。また、育成機関も存在し、選手たちの成長を支援しています。プロのサッカー選手として活躍する者もいれば、地域でサッカーを教えるコーチとして活動する者もいます。さらに、グラウンドの建設や整備を行い、活動を支える人々もたくさんいます。彼らは、選手たちがスムーズにプレーできる環境を整えるために貢献しています。もちろん、スポンサーの存在も重要です。シビックテックにおいても、トップランナーを生み出すにはそのような層の厚さが必要です。

GovTech 企業のように、ビジネスとしてしっかりと利益を生み出し、雇用を生み出しながら社会課題を解決する人たちも重要ですが、全員がそのような存在を目指す必要もありません。地域を良くするためにボランタリーに活動することも重要ですし、ブリゲードの中で、楽しみながら無理の無い範囲で活動を行うことも良いでしょう。自治体と一緒に活動しても良いですし、しなくても良いです。

おかげさまで、10年という積み重ねの中で、様々なレイヤーの活動を行うことができるようになってきました。例えば、Code for Japan では Civictech Challenge Cup というユース育成のためのプログラムも実施していますし、Civictech Acceleration Program というアクセラレーションプログラムも実施しています。(ちょうど、12月15日 に 3rd Badge の説明会を開催するのでこちらもぜひよろしくお願いします!)

Code for Japan Summit にも、たくさんの若者たちが集まってくれました。シビックテックの10年を支えた世代が第一世代だとするならば、次の世代に向けて、活躍の場を作り層を厚くしていくことも第1世代の役割だと感じています。

日本なりのシビックテックの形はある

10年前に Code for Japan を始める時に、「日本人は欧米に比べて市民の感覚を持っていない」とか、「お上意識がすごくて、オープンデータとかをやってもきっと無理でしょ」みたいな批判をしてくる人が多くいました。

しかし、10年の歳月が経過し、日本におけるシビックテックは大きく変化してきました。現在では、多くの人々がシビックテックの活動に参加し、社会課題の解決に向けて積極的な取り組みを行っています。このような変化を見ると、日本には日本なりのシビックテックの形が存在し、それが文化として根付いてきていると言えるでしょう。

例えば、日本のシビックテックの取り組みは、地域や地方自治体との連携が重視される傾向があります。地域の課題解決に向けて、地域住民や行政と協力し、共同で取り組むことが特徴的です。また、日本のシビックテックの活動は、ボランティアや地域のコミュニティ活動との結びつきも強く、地域社会全体の発展に寄与しています。特に、日本のブリゲード(地域版Code for)の数の多さは他国からは驚かれるほどです。

これらの要素を考慮すると、日本におけるシビックテックは十分に文化として根付いており、今後もさらなる発展が期待されると言えます。日本ならではのアプローチや価値観を大切にしながら、より多くの人々が参加し、社会課題の解決に向けて協力していくことが重要です。

ボトムアップが重要

最も重要なのは、これはボトムアップの活動であるということです。トップダウンではなく、私たち一人一人が主体となり、小さな変化から大きな影響を生み出すことができます。

私たちの活動は、技術を超えて、社会にポジティブな変化をもたらすものです。私たちは、一つ一つの小さなステップを大切にし、共に成長していく必要があります。

今、それぞれの分野で活動している皆さんが、このシビックテック文化をさらに豊かにし、それぞれの地域社会で新たな価値を創造していくことを心から願っています。

シビックテックの文化を形作ってきたすべての方々に感謝申し上げます。これからも、私たちの共通の目標に向かって、力を合わせていきましょう。

Happy Civic Hacking!

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