見出し画像

皮膚は第3の脳〜「ただ触れる」ことの重要性


2019年から人類は、家族以外の人たちと、密に触れ合う機会が極端に減った。

親族間であっても、一方が高齢だったり、医療関係者だったりすると、会うことを控える雰囲気が、コロナ以降の私たちに染み付いている。

そんな中、父が脳出血で倒れた。生死をさまよう数日、病院に駆けつけたところで面会できるわけでもなく、その後半年間の入院生活のあと、介護付き施設に移ってやっと面会できるようになった。

右半身に麻痺が残ってしまった身体を、車椅子の左側にもたれるようにして、父が個室から降りてきた。
面会は1Fのロビーで、時間も他の家族とかぶらないように、時間も30分以内と決まっている。
滅多に会いに行けない私は、話したいことがたくさんあって、30分じゃ足りないけれども、それ以上長くなると父も疲れてしまう。

だからせめて、手を握る。さする。麻痺した右腕をマッサージすると、気持ちよさそうにする。そう、動かせないだけで、父の右腕には血管も神経もちゃんと通っていて、温かさや柔らかさ、心地よさが伝わるのだ。


触れ合う・触る ことで感知する生存判断



ヒトが群れを作って生活するようになった時、「敵か、味方か?」を瞬時に見分けるために、頼りにしたのが「皮膚」だという。


皮膚の役割は、第1に肉体を保護すること。第2に、温度や硬さ、痛みなどを感知するセンサーの働き。でも、私たちの皮膚って、それだけじゃない。
やさしく「触れる・触れられる」ことによろこびを感じる生き物なのだ。


生まれたばかりの赤ちゃんが、お母さんとの肌のふれあいを通して「安心」や「つながり」を感じ、そこから「生存できる」という確信を得られないと、自ら発達をやめてしまうことがあるという。

画像1


人間が、皮膚から得られる情報をここまで重要視する理由は、それが生殖と結びつくから。

俗にいう「肌を合わせる」というのは、まさに皮膚という第3の脳が、「この相手となら子孫を残せそうか」ということを判断しているわけだ。


オンライン化によって、ますます視覚偏重が進んでいる世の中。目から入る情報はとても強力であるため、そこに引っ張られやすくなるけれど、生存を左右する判断に関しては、実際に触る、肌で感じる、という行為を通さないと、難しい。



ただ触れる。それだけで、心が開く。つながれる。


「触れ合う」体験を、保育園や小学校でさせてあげられない今。
だからせめて、親子でスキンシップの時間をたっぷり取りたい。

私は今、ヨガを教えているけれど、原点になった「なごみの手あて」では、二人で行うペアワークが推奨されている。触れる、さする、揺らす、そんなやさしい動きから、相手の身体の情報を皮膚を通じ伝え合う、おばあちゃんの知恵的なメソッド。

お互いの身体に触れ、触れたところのあたたかさや柔らかさ、触れられたところの心地よさやくすぐったさ、そんな感覚を思い出しながら、家族と、そして身近な人たちとやってみる。

あるいは、ペットがいる人は、1秒間に5cm程度の速度でゆっくりと毛並みを撫でてやると、自分の脳にも「安心」や「心地よさ」の感覚が伝わる。


子どもが不登校になっていた時期、暇そうにしているので「ペアワーク」の相手をしてもらっていた。息子はその時の気持ちよさを覚えていて、いまだに寝る前に「やって」とせがんでくる。
こうして自然に体に触れさせてもらえるのも、あと何年か。やわらかい手の感触を楽しみながら、わたしの幸せは、まさにこの手の中にある、と思う。


「なごみのペアワーク」のレッスン動画を、youtubeで限定公開しています。公式Lineに登録後、「ペアワーク」と書いて送信してください。動画のリンクを送ります。https://lin.ee/dH07BGfy

風のラボ 公式ライン

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?