足跡日記👣§23 ワッフル屋さんの前で

 旧来の友人とランチをしながら談笑して、新宿駅で別れた。さらなワイシャツを買いに、サブナード方面に足を運ぶ。道中、南口の大通りの一角で、3人の学生と思しき少年たちが公然と声を上げている。一番左の少年は募金箱を持ち、残る二人はプラカードを掲げていた。見ると、「学生による能登半島沖地震募金活動」の文字。どうやら、今年の元日に能登を襲った大地震の募金を嘆願しているようだった。ぼくは半ば通り過ぎていた踵を返し、募金をしに彼らの下へ向かった。

 「募金活動をしているんですか?」
 「あ、そうです!」
 「皆さんは学生ですか?」
 「はい、中学生です。中学生と高校生が集まって活動しているんです。」
 「そうなんですか。全国的に活動しているんですか?」
 「はい、北は青森から南は九州までメンバーがいます。ぼくは栃木から来ました。」

 中高生で、全国的な組織体制をつくっているとは。てっきりぼくは大学生と思っていたので、と胸を突いた。

 「すごいですね!実はぼくも同じようなことをしたことがあって。Fridays For Futureっていう気候変動に取り組む団体で。」
 「あ、ぼくはFFF Tokyoのメンバーですよ!最近は顔を出せてませんが…。」

 これまたびっくり、ぼくが参加していたのと同じ団体に所属していたのか。

 「そうなんですね!まさか仲間に出逢うとは!…500円でもいいですか。」
 「はい、おいくらでも嬉しいです。ありがとうございます!」
 「頑張ってください。応援しています!」

 手を振ってその場を去った。踵を返して良かった、と思った。彼らの直向きな行動に、強く前を推された気がした。
 彼らの勇姿を今一度目に収めようと振り返ったとき、向かいにワッフルを売るお店が見え、そこに長蛇の列ができているのを見た。一人スマホを弄っている人もいれば、仲睦まじく談笑しているカップルの姿もある。ぼくは、少し悲しくなった。

 ワッフルの値段は大体一つ200円ほどだ。そしてぼくはそれを買うのは勿論自由だと思っている。ただ、それくらいのお金を、勇気を出して募金活動を行っている彼らに少しでも分けてくれたら。きっとそのお金は、遅かれ早かれ、誰かのための物資に充てられ、誰かを幸せにするだろう。その価値は途轍もなく大きい。なのに、その学生たちには関心を持たず、ワッフルを買おうとしている大勢の人たちを見て、「より自分事なのはワッフルなのか」と、ちょっと気を暗くした。誰も悪くはないのだけれど。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?