足跡日記👣§11 図書館にて

 夜7時。図書館の本の返却期限が過ぎていたので、徐ら腰を上げて大学に向かった。期限が超過したことに対してお叱りがないかほんの少し怯えていたが全くの杞憂に終わり、そそくさと次読みたい本を漁りに階段を上がる。今日から自分で、できるだけ一日一冊、難しければ二日で一冊本を読んでみよう、と思った。いきなりどかっと借りるのは億劫なので、まずは一週間分、4冊くらいを借りることにした。視界には四方八方に目を引く本が立ち並び、ぼくの知識欲を掻き立てる。ここは天国か?半ば昇天する心地がした。

 まず手に取ったのはMarkus Gabriel著の『アートの力 美的実在論』、続いてMinouche Shafik著の『21世紀の社会契約』。どちらも通路でピックアップされていた本だ。「アート」と「社会契約」という言葉の誘惑に惹かれ、施行する間もなく指が伸びていた。環境系の本も読もうと、手に取ったのは『ハイデガーと地球:環境哲学論考』(Ladelle McWhorter著)。ハイデガー好きのぼくにとっては、彼の思考と環境を架橋している本はまさに僕得でしかない。飽かぬ欲望を懸命に封殺して、逡巡した挙句手に取った最後の本は『<顔>のメディア論』(西兼志著)である。理由は以前「顔」に関する論考ををエマニュエル・レヴィナスや鷲田清一の書籍で知り、めちゃくちゃ面白かったから。どれも自分にとっては珠玉の宝石に思える本である。

 しかしこれらは、僕が読みたい本の大海の一滴に過ぎない。それらは東北大学の図書館本館でさえ無数にあるのに、農学分館の本を合わせれば、もっと、ひいてはすべての図書館や書店の本を合わせたら星の数ほど存在する。人生は有限なのだから、誰の/何に関する本がぼくのライフステージにおいて一番自分に影響を与えうるのか、自分なりに考えながら計画的に読もうと思った。

 世界で喘ぐ人々の傍らで、こんな事を考えるまでに何とも私は幸せ者なのだろう、と罪悪感をひりつかせながら。

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