深夜高速の夜

1月26日
昼過ぎに起きた私は、準備もそこそこに家を出た。

向かった場所は、通っていた高校の最寄駅。そう、今日は高校の時の同級生たちと遅めの新年会を開催する日なのだ。

学生時代からすっかり変わってしまった駅で、大人っぽくなった皆と再会する。話しはじめたら仕事の話メインで、『ああ、大人になったなぁ』と思うこともあった。
しかし、どんどん話していけば昔やったバカなエピソードに盛り上がったり、未だにバカなことをしてゲラゲラ笑ったり、盛り上がりすぎて急遽二次会を始めたり、ノリだけでオールカラオケしようとしたり。結局中身は皆高校生だった頃のままで、「いい意味で変わらねぇなぁ!」とまた笑うのだった。

盛り上がりすぎた結果、終電をしっかり逃した私は、同じ場にいた親友の自宅に泊まらせてもらうことになった。
当時家が近く、何度となくお邪魔させてもらった彼女の家。お夕飯をご馳走になったときもあったっけ。
実家に帰るときと同じ路線に乗って、少しノスタルジーな気持ちになりながら2人は電車に揺られた。

「もっちーはさ、こっちに帰ってこないの?」
帰路の途中、親友は私にそう尋ねた。
「うん、帰らず今の家で一人暮らし続けながら文筆家を目指すよ」
私がそう答えたことに、彼女は少し不安げな顔をしていた。
超個人的な話をしていたので、彼女との思い出を守るためにもここには詳しくは書きたくないのだが、要約すれば彼女は今の私をひどく心配していた。生活費のためだけにバイトをしこたましていることを。そして、安定した将来も約束されない、先も見えない文筆家の夢を追うことを。
彼女は、私の文章を毎日読んでいると言ってくれた。初めて聞いた。アピールすることなく、当たり前のように毎日読んでいるという。文章に関して、軽々しく『いいね!』だとか『応援してるよ!』などと言わないのは、自分のその発言によって私の将来が約束されるわけではないから。さらに、「自分には文章を読む機会がないから良し悪しがわからない、それで手放しに褒めるわけにもいかない」とも言った。
すべて、私のことを真剣に考えた結果出てくる、まっすぐな感想だった。今の私にはそんな風に言ってくれる人は彼女くらいだと本気で思う。

「貴女は本当に私のことを考えてくれているね、ありがとう」
私は心からの感謝を伝えた。
「でもね、」
私は続けてこう言った。
「今はこの生活を続けることが正しいと思ってる。正義だとすら思ってる。安定した生活あっての夢だってことももちろんわかる。けど、それは私のやりたいことではないの。副業的な文筆活動じゃなくて、誰かに評価されたり、書くことでお金をもらえるようになりたいんだよ。結局、やりたいことしかしたくない子供なんだよ。色々ちゃんと言ってくれたのにごめんね。」
私が地元を離れることを悲しんでいたことをずっと寂しいと言ってくれていた彼女に、最大のわがままを言った。

この話を含めた熱い話を、ビュウビュウと北風の吹く寒空の下、自販機のミルクティを飲みながら語った。時に語気を強めたり、涙ぐみながら。
腹を割って話した後、彼女は
「言いたかったこと、全部言えてよかった」
と笑っていた。
その後、彼女の家まで寒い寒いと笑いながら坂を駆け下りた。生きててよかったと思える夜は、こんな夜を越えた先にあるのかもしれない。

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