『エヴァ』感想文「第参話:鳴らない、電話」

第参話のサブタイトルは「鳴らない、電話」。シンジがミサトから貸与された携帯電話を使っている様子の描写から、最終シーンにてトウジがシンジにかけた電話が繋がらない描写まで、通奏低音として機能している。

シンジの転校先の学校では、劇中の世界観設定の一部である「セカンドインパクト」の説明を、授業の内容として行っている。しかし、のちの使徒戦の際にケンスケが言及したとおり、報道管制が当然となっている世界で、一般に語られる歴史の内容を「鵜呑み」に信じている人間がどれだけいるかは疑問であり、これはまた、視聴者に対してもその内容を疑うように仕向ける作為のある演出でもあろう。

第壱話および第弐話は長く見積もっても数日間の出来事と思われるが、その具体的な長さの描写がなかったのに対し、今回のエピソードでは、前回の使徒戦から二週間は経過していること、今回の使徒戦から最終シーンまでに数日は経過していることを明言している。特に後者の、数日の不在の間の主人公の言動をサスペンドしつつ、次回へのヒキとする演出は独特であった。

また、使徒戦においてゲンドウの不在におけるミサトの指示がリツコから「越権行為」であると指摘されるも強行された。ここにおいて「越権行為」の命令内容は「民間人のエントリープラグへの収容」および「撤退」の二点に分かれていたわけだが、シンジが後者の「撤退」命令を無視し、プログレッシブナイフで使徒の撃破を、「逃げちゃダメだ」という情動に駆られるまま強行している。

ここにはふたつ着目すべきポイントが考えられる。ひとつは、ミサトの越権命令に対してシンジが独断専行を行ったという事実。もうひとつは、序盤で「言われたことを素直にやることが処世術」であり「乗りたくて乗っているわけでもない」エヴァに乗っているシンジが、「逃げちゃダメだ」という動機で自分の意志で行動した点。次回は特に後者の影響に注目したい。(了)

前回の第弐話が第壱話とセットであったように、前回たしか六話ぐらいまで通して観たときの記憶では、今回のエピソードも第四話と割とセットだったような覚えがある。二話ごとのセットで感想文を書いてもいいかもしれないし、こだわる必要もないかもしれない。

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