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「キャメラも芝居するんや」

映画の「いい絵」とは

男はつらいよシリーズで惹起される昭和日本への郷愁について、先日ここに書いた。

最近は映画館(シアター)のスクリーンで映画を見ることがめっきり減った私だが、報道カメラマンをやっていたこともあり、テレビ画面サイズでも映像の美しさやカメラワークの流麗さにハッとさせられることがある。

30年ほど前のテレビ局報道の撮影セクションには、映画業界を経験してきたおじさんたちが少なからずいて、その職人風のたたずまいはちょっとコワくもあり憧れでもあった。

職場には各局をモニターしているテレビがずらっと並んでいる訳だが、ある日の昼下がりのことである。ある局で流れていた古い日本映画の1カットを見た元照明マンおじさんが「ああー、これはいい絵だなあ!」と感嘆した。「絵」とは「映像」と同義である。映画は篠田正浩監督の「はなれ瞽女おりん」。私にはなんということもない古い街道のワイドショットだったので、「へえ、これがそんなにすごいのかな」と思った記憶がある。

昭和の名カメラマン

この作品の撮影が宮川一夫だった。溝口健二監督や黒澤明監督と組んだ昭和の名カメラマンである。「キャメラも芝居するんや」はNHKが宮川を取り上げた番組のタイトルで、本人のセリフだったのだろうと思う。

カメラワークにばかりに注目していると映画の本編を楽しめなくなる。アツい会社の先輩は、レンタルビデオなどを借りた際にはまず本編を楽しんで、2回目にカメラワークをチェックするという見方をしていた。

「はなれ瞽女おりん」をレンタルして観てみたいと思った。
(21/11/10)

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