見出し画像

隅っこを狙え

 いまの部署に異動して早くも2年が経った。早番や遅番がない、突発的に呼び出されることがない、カレンダー通りに祝日を休めるなど、報道時代にはあり得なかった“普通の生活”を満喫している。

 オフィスのレイアウトはかなりクラシックだ。メインエリアは6つのデスクから構成される「島」が3つ。このビルが完成したころから変わっていないに違いない。かつてはもっと要員が多かったらしいが、いまはめっきり減って、半分ほどしか使われていない。豊富な数のおじいさんたちがダラダラ、チマチマとやっていたころの痕跡があちらこちらに残っている。

 私のデスクは真ん中の島の窓側。背中合わせ側にも人が座っている。

 昨年ひとり退職したものの人員補充はなく、デスクがまた空いた。すると、ある同僚が希望してその席に移動した。「ここ、落ち着くんですよ」という。一番はじの島の窓側で、横も後ろも壁という「隅っこ」である。このポイントを狙うのはオセロプレーヤーだけではないのだった。

 その同僚デスク付近に佇んでみると、なるほど、「2方向が壁か窓」というレイアウトはなかなかいいものだ。「落ち着くんです」というのもよくわかる。

 いいなー。

 シニアスタッフのその同僚は私より先に職場を去ることになる。代わりの人員は来るのだろうが、今のうちから「そのデスク、次は私に使わせてくれ」と“予約”しておこうかな、と真剣に考えている。
(23/8/25)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?