「風邪はウイルスが原因の事が多いので、抗菌薬は効かないんですよ」の説明で十分ですか?(医療者向け)

某新聞記事を見て、アンケートをしてみました。

あまり拡散しなかったので、主に私のフォロワーさん中心の回答と思います。
私のフォロワーさんは比較的健康意識の高い方々が集まっている印象ですし、医療関係者も多い。年齢層は20〜40代が中心と思います。
その結果がこれです。

正しい答えが7割。

更に、アンケートの元になった新聞記事。
http://www.asahi.com/articles/ASK2801L5K27UBQU013.html

抗菌薬はウイルスに効くか。
これによると、正しい答えを選んでいるのは「25%」です。 4分の3の人は、抗菌薬はウイルスに効かない事を正しく理解していません。

さて、私も、他の先生方も、こんな説明を、よくすると思います。

「風邪は、ほとんどウイルスが原因だから、抗菌薬(抗菌剤、抗生物質)は効かないですよ」

このシンプルで真っ当な説明。
私は、かなりわかりやすく、噛み砕いて説明をしているつもりです。
が、実はまだまだ足りていないんです。

私のアンケート結果を元にすれば3割の人が、新聞のアンケート結果を元にすれば実に7割以上の人が
「は? なんで? ウイルスなら抗菌薬でいいじゃん、なんで処方してくれないの?」
と、考え、根本から理解してもらえていない可能性があります。

医療者が考える以上に、医療の知識というのは一般の方に浸透していないのだと実感しました。
先程の例であれば、説明にせめてもう一つ、二つ、加えないといけません。

「抗菌薬は、菌、つまり細菌にしか効果がないんです」
「ウイルスは細菌ではありません」


もう一つ、アンケートを取りました。


少し極端な単語を出しましたが、よく使う「機序」の言葉。
医療職以外の方、8割には通じません。
他にもそんな単語、山ほどあります。
説明をする時に使ってしまうと、それだけで「医者の言う事はよくわからん」になってしまう可能性があります。

年末調整の書類や、市役所などにあれこれ書類を出さないといけない時、「書き方の例」やら、裏面の注意書きを見て
「なんでお役所はお役所言葉ばっかり使うんだ。もっとわかりやすく書けよ。結局何が言いたいのかよくわからん」
と思った事はありませんか。私はあります。山ほどあります。
恐らく、あの感覚と似たような気分を、患者さんは味わっています。


先生方、時間の許す限り、全力で沢山説明されてきていると思います。
もしかすると、少しの工夫で、もっと患者さんに寄り添えるかもしれません。
ネット上で情報発信されてる医療者の皆さん。
これも少し言葉を足したり、言い回しを変えたりする事で、より多くの人に言葉を届けられる可能性があります。

さて、これを一般向けにツイートしました。ツッコミどころ満載です。
が、細かい薬の作用機序や作用部位、細菌とウイルスの細かい違い云々は、「抗菌薬はウイルスに効くんでしょ?」という方には、恐らく通じません。
伝えたい部分だけを1枚の絵に収まるようにピックアップしたら、こんな書き方になりました。
私の能力ではこれが限界でした。もっと詳しくかつわかりやすく、説明できる方、ぜひぜひ情報発信してください。

「このくらい知っているだろう」の前提は、思った以上に間違っているようです。
正直なところ、抗「菌」薬がウイルスに効くと考える人がこんなにいるとは思っていませんでした。
不要な抗菌薬の処方は避ける。そのために耐性菌の説明はとても大切で不可欠です。
しかし、その前提条件が理解されていない可能性を知った上で、どうか説明の工夫をされてください。これまでの「でも、やっぱりください」を避けられるかもしれません。
もしかすると、それだけで処方が減らせるかもしれません。(そうであったら、なんと素晴らしい事と思いませんか)

また明日も、風邪の患者さんが沢山外来にいらっしゃると思います。
説明の際、よければ「もしかしたらこの患者さん、知らないかも」と心の隅に置いていていただけたらな、と思います。
沢山の有益なツイートをされてる皆様、ぜひ、ときにはその30%(もしくは新聞によると75%)の人に向けたメッセージ、送ってみませんか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?