『シン・ウルトラマン』

観ました。


観る前のかんじ

とにかく、観る前からツイッターのタイムラインでは「セクハラのシーンがある」と話題。紛糾。わたしのタイムラインで。
一方、毎週聴いている深夜ラジオ「伊集院光深夜の馬鹿力」では、
”むちゃくちゃ面白かった。これは昔のウルトラマンを知ってるからなのか、と思ったけど後輩の若手達も面白がってた。色々と詳しい人に聞くと色んな元ネタや成り立ちがわかって楽しい”
という感じ。

事前に入ってた情報はそんなところです。
いや嘘、まだあった。

今回の監督である「樋口真嗣」さんに関して知っているのは、特撮のすごい人だということ。それはそれはすごい人らしい、ということ。
あと某学生映画コンテストの特別審査員をされていて、授賞式でのコメントが、めっちゃいい人だということ。自分を下げつつ、学生を褒めつつ、でも大事なアドバイスは忘れずで、
あの授賞式はねえ、いいんですよ。
みなさんも見てほしい。
それはそれとして劇場版『進撃の巨人』はだめだったなあ、ということ。とにかく特撮(巨人が出てくるとこ)以外の、人間がドラマをやってるところが、演出できないんだなあ、と思ったこと。
だからどこを重要視するか、ですけど・・・。


観てみたかんじ

『シン・ウルトラマン』も、まあ、そうでした・・・。

そうでした、というのは、おれの映画鑑賞の積み重ねと、いまのバイオリズム的に、そこ、人間のドラマパートがだるいと、映画自体だるいなあ、って思っちゃう、ということです。


いやまあ、ほとんどの時間、セクハラの描かれ方がどうなるかに、集中してしまったきらいはあるけれど、それにしても。


エヂカラについて


エヂカラ(画力)のない会話シーンが多く、『シン・ゴジラ』も”早口でのりきる”という作戦は共通してたと思うけど、あちらは案外退屈していない。(なんで?)

今回は、とつぜん画質の変わる(下がる)カットも多くて(多用されてるパソコンの内部カメラ的なカットだけでなく、ふつうの場面でも)、
それは編集にクレジットされている「栗原 洋平 庵野 秀明」お2人(のどっちか)によるものかもしれない。
監督の決めたサイズを、思いっきりトリミングしてズームして、だから解像度下がってるんじゃないか。もしか。
(※と最初書きましたが、パンフによると撮影隊がおのおの散って様々なアングルで撮影していたそうで、なかにはiPhoneカメラもあったとのこと。トリミングでなく最初からそういう画質のようです。現代は気にならないでしょう、と書いてあったが、気になるって)

あとフルCGのカットで、クオリティがなんか、プレステ2から3の頃のデモムービーみたいなレベルのが・・・
それを言ったら『シン・エヴァ』の終盤の、ハリボテシティで格闘してるところもそうだったのだけど、今回はカメラの動きも単純だから余計そう感じるのだろう。
なんなんだろうあれは。

いや、特撮シーンはテンション上がるのだ。もちろん。
やっぱあっはっは。さいこー。と思うのだ。
でもそのあとの、ストーリー進行パートで、だれるのだ。

人間ドラマ?

人間ドラマも、別に、ないしなあ。
ないってことはないけど、作品内で”あるフリ”をしているほどには、ないと思う。
それは手錠を外してあげるシーンで、まず思った。まだエモくないのに!エモいふりを!
それがつまり、もともと・・・台本時点で無いものなのか、
演出によって「あんまり見えなく」なっているのか、というのが重要ですが。

これはまだ読んでないのだけど、感想ブログに「そんなに人間は好きじゃないだろう、カラー。」というのがあって、これを書きおえたら読むのだけど、
そう、アニメのひとというのは、わりと、
人間みんな死んじゃえ
を、やるのである。
押井守監督は『イノセンス』で、人間はみんな人形でいいだろ、
富野由悠季監督は『逆襲のシャア』で地球に隕石をぶっこみ、たかったが寸止めし、
宮崎駿監督は『ナウシカ』で、『ラピュタ』で、『もののけ姫』で、『ポニョ』で、だいたい人間みんな死んじゃえ、をやってるだろう。
もちろん庵野秀明監督の「エヴァ 旧劇場版」もね。


セクハラシーン

そして問題のセクハラシーン。
これは、目立つものでは3つ、あったと思う。

1)ツイッターで見かけたのは、”嗅ぐ”シーンだ。
  女性側からすると”嗅がれる”シーン。。。
2)それから、気合を入れるとき自分の尻を叩くというカット。(ちなみに
  これはひとの尻も叩く)
3)さいごに、巨大化させられ、それを野次馬のカメラ小僧(おっさん)に
  撮られ、ネットにアップされるという描写。
  (その後の検査に関するセリフも含む)

嗅ぐシーン
に関しては、正直、拍子抜けしてしまった。これくらいで? と思ってしまった。それなりに事前検討があったレベルだと思った。
(というか、長澤まさみサイドがチェックしないわけないだろうと思う。思うが、何も知らないけど)
流れをいえば、マサミ(役名ちがう)が敵方により巨大化させられ、直ったあとで、こちらは巨大化の仕組みをつきとめれば敵を叩ける、ということになる。どうもマサミの体は一旦分解みたいなことをされ、別の異空間であれこれ。その異空間をつきとめられれば! でも人体のすべては痕跡を消されてそこへ行ったはず。手がかりなしか。いや、匂いだけは消されないぞ。じゃあ・・・。
といって、マサミは嗅がれる。警察犬のようになった主人公に・・・。
これはセクハラですね。こう書き直してみると・・・。

なのだけど、いくらか「策」を打ってあると思った。それは、

・主人公は人間の感情を持っていない宇宙人である
 (だから”女体を嗅ぐ”ことの文脈をわかっていない)
・マサミは主人公へ、明らかに好意をもっている
・↑と関連して、「(忙しすぎて)お風呂も入れてなくて!」と
 ギャグシーン的な演出にしている
 (セクハラをギャグ扱いするのは悪い慣例ですが)
・敵方が、「あなたのような人がそんな変態的なことを」と、
 ”嗅ぐ”のセクハラ性を明言する

というわけで、無言でセクハラ世界を描くのではなく、まだしも「これはセクハラである」と明言はしていた。と思う。
ただそれらの「策」は、”嗅ぐ”を描かなければいけないんだ! という要請のもとの話であり。
映画はすべて作り事なわけで、映画内で起こることはすべて、誰かが「GO!」といったから。つまり”嗅ぐ”自体、なくていいんじゃないか? と思ったら、それはそうなわけです。

それでいうと、上の(1)(2)(3)、3つもある!!!
それも、ぜんぶマサミ!!! 
そこが最悪だと思う。悪手です。

元祖ウルトラマン好きとしては、おそらく「巨大フジ隊員」のエピソードは、やっておきたかったところだと思う。上に書いた(3)ですね。これはウルトラマンの中でも印象の強いものなのだ。

そして、現代で女性が巨大化して街を歩いていたら・・・というシミュレーションの当然の帰結として(そうなのか)、パンチラ狙いのおじさんが駆けつけてくる。のもわかる。
ネットにアップされた動画、のタイトルのシミュレーションぶりは初見で見えただけでも、「見えそうで見えない巨大女性」とか「人間とは違うらしいので問題ないはず」とか、妙にリアルなセクハラ言い逃れが並んでいた。

アメリカからミサイルを買ったり、諸外国との関係性、核の傘から異星人の傘に、とかのしょぼしょぼさもリアルなれば、こういうリアルさも入れてくる・・・ということでもある。

じゃったら、(1)の”嗅ぐ”は、別の手で敵の弱点を見つけるプロットにできんかったんだろうか。これも元ネタあったりするの?
そして何より、(2)の尻たたきは、まったく功を奏してない!
なんの、キャラ付けにも、描写にも、掘り込みにもなってない! ただ、セクハラの上乗せとしてのみ、効果を上げていると思う。
これ誰が考えたんだろう・・・。


人間ドラマ・・・人物の掘り込み、ができてない状態でセクハラ的な(どう裁かれるかわからない)シーンを入れていては、それを受け止める登場人物がいない(薄すぎて)のだから、どうしようもないじゃないか。
ただ、制作者の思い付きと願望が浮かんでるだけになっちゃうじゃないか。フィクション世界の血肉がないんだから、その人には。


なんだろうなあ。

今日はそのへんです。

パンフやら感想やら読みます。


いちばん感動したところ

一番感動したのは、
スタッフロールで、これまでの作品をあれこれ見てきた人たちの名前を見て、
「ああ、こんな、
あたかも誰に見せても恥ずかしくないかのような作品を作れるようになったんだなあ」
と思った。

何様か。すみません。
でも、そういうビッグプロジェクト。おおやけの。なんだなあ。と思った。


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