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【考察】掛川百鬼夜行はなぜ成功したのか?

終わった後すぐに「またやりたいな」と思えるイベントってそうそうないのですが、掛川百鬼夜行については忖度ナシでそれだったなと。
まわりからも複数同じ声が聞こえてきたので本当にそうなのだと思います。

要因を考えてみたのですが、一つはもちろんイベントにたくさんの方が来てくださったこと。イベントが盛り上がらなければ、そもそもみんな楽しくないですからね。

当日は僕自身も半分はプレイヤー(天狗)として参加していましたが、子どもたちとの触れ合いがとても楽しく、イベント終了後にはなんとも言えない充実感を得ました。

エリア全体で2,000人という想定を超えた集客が、イベントそのものの熱量やそこに関わった人たちの満足度を上げたのは間違いないと思います。

となると、「なぜこれだけの集客を実現できたのか」やはりここの掘り下げが重要になってきます。
「やった!大成功のイベントだから来年もまたやろうぜ!」という浅い思考では、おそらく痛い目を見ることになるでしょう。

掛川百鬼夜行を紐解くと見える「陰と陽の多層コラボレーション」

掛川百鬼夜行はメディア等で「和装ハロウィンイベント」として紹介されていますが、その実態は異なります。

コンテンツを紐解くと、仮装以外に

  • 音楽ライブ

  • 謎解きゲーム

  • 怪異物語創作コンテスト

があり、それらが今回のイベント成功のカギになっていました。

ちなみに謎解きゲーム(有料500円)は開始40分で用意していた100個が売り切れ、有料ライブチケットは予約開始10分で完売し、当日は立見規制が出るほどの混雑に。TRPGに関しては初開催かつ無名のコンテストにもかかわらず、小説部門96作品、TRPG部門79作品、計175作品の応募がありました。

通常ハロウィンイベントというと、いわゆる「陽キャ」な人たちによって繰り広げられるイメージですが、掛川百鬼夜行のコンテンツは「陰キャ」寄りのもので、言葉を選ばずにいうとオタクな人たちに刺さる内容だったと思います。(実際のところ「TRPG」と聞いてピンとくる人たちが果たしてどのくらいいるでしょうか?)

つまるところ「陽から入って、陰へクソほど振り切った」こと。
これが掛川百鬼夜行の成功要因に対する僕の見立てです。

「ハロウィン」「仮装」という大きな陽の輪に、「謎解き」「ライブ」「TRPG」という異なる陰の輪が重なり、その普段交わることのない層のコラボレーションによって、集客が多層的に実現された。これが今回のイベント成功の実態ではないでしょうか。

掛川百鬼夜行の特異点は「一人の狂気」

でもこれ、普通は難しいです。
なぜなら、コンテンツの輪を広げることは1つひとつのコンテンツクオリティを下げる可能性が高いから。それは「『蕎麦屋』と『カレー&ラーメン&蕎麦屋』どちらが魅力的か」という問いかけでなんとなくわかると思います。
アレもコレもと手を広げ過ぎた結果、どれも中途半端なものになってしまう。それがコンテンツの輪を広げるリスクです。

ではなぜそのリスクを回避できたのか?
掛川百鬼夜行は何を持ってしてブレイクスルーが為されたのでしょうか?

その答えは、実行委員長・戸田さんの狂気です。
今回用意されたコンテンツはすべて戸田さん自身が好きなものに集約されています。普段彼のタイムラインを見ている方ならわかると思うのですが、彼はかなりのオタク気質です。その戸田さん自身がやりたかったことを全部このイベントにブチ込んだ狂気、それがブレイクスルーの特異点だったのだと思います。

仮に今回のコンテンツに興味のない”普通の人”が企画したらどうなっていたか。掛川百鬼夜行コンテンツの1つ「怪異物語創作コンテスト」を例にして考えてみましょう。

ケーススタディ:狂気(本当に好きな人)と正気(普通の人)で、アウトプットはここまで変わる

妖怪やもののけを題材にした「物語創作コンテストを行う」、このアイデアに対しては、おそらく多くの方が「いいね。やろうやろう」となると思います。
掛川や妖怪にちなんだ物語を募って、それらを表彰する。表彰された物語についてはWeb上で見れるように公開する。だいたいこんなアウトプットに落ち着くでしょう。
企画としては悪くありませんし、掛川のことを知ってもらえる良い機会にもなりそうです。

では「本当に好きな人」が企画するとどんなアウトプットが生まれるのか見てみましょう。

本当に好きな人にしかできない発想〜その1〜:TRPGシナリオ部門を設ける

質問ですが、物語創作コンテストに「TRPGシナリオ部門」を設けようと考える人はいるでしょうか?

TRPGとは進行役とキャラクターを演じるプレイヤーが会話しながら物語を進めていくRPGなのですが、まずその存在すら知らない人が多いと思います。
さらにTRPGには「エモクロア」や「Kutulu(クトゥルフ)」などのシステムがあり(僕はまったく知りませんでした)、今回のコンテストではそれらを対象とした創作物語として、短編小説・SS部門、TRPGシナリオ部門の2部門で募集がかけられました。

ターゲットとしてはどニッチですが、結果としてそこにTRPGファンが反応したのです。

SNSで発信されたツイートは「228件のいいね」「271件のリツイート」を獲得し、もはやプチバズと言っていいでしょう。

とはいえ戸田さんは、おそらく普通にTRPGが好きでこのコンテンツを差し込んだだけだと推察します。

↓プライベートでTRPGを楽しむ戸田さんのツイート

続いてもう1つの切り口から見てみましょう。

本当に好きな人にしかできない発想〜その2〜:受賞作品を収録した冊子を頒布する

「冊子を頒布する」
この言葉にピンとくる人はいるでしょうか?言葉としての意味はこうです。

頒布(はんぷ):品物や資料などを、広く配ること。

weblio辞書

今回の企画では受賞した作品を1冊の本にまとめ、プレゼントしたり、販売したりしました。

おそらく普通の人は「わざわざ本にする必要ある?そんなニーズないでしょw」と思うので、この発想に至りません。せいぜいWeb掲載止まりでしょう。

戸田さんがこの発想に至ったのは、彼がオタクだからです。
自身も頒布という言葉に馴染みがなかったので調べてみて分かったのですが、「頒布」という言葉は同人誌の即売会でよく使われるそうです。
この言葉が使われれるようになった背景は端折りますが、ともかく「頒布」は特定の領域で使われるオタク用語と言えます。

そしてそれがしっかりとファンに刺さっているのです。

このように、オタク文化に馴染んだ戸田さんにしかできない発想、取れない行動(すなわち狂気)が、掛川百鬼夜行には至るところに見られました。

「本当に好き」は強い

ここまで「掛川百鬼夜行はなぜ成功したのか」についてお伝えしました。

すべてのコンテンツが取ってつけたものではなく、「本当に好きな人の手によって入念に練り上げられたこと」、これがイベント成功の最大のポイントだったと言えるでしょう。

イベント終了後、戸田さんからはこんな投稿がなされています。

百鬼夜行の担い手を公募する投稿。
年々担い手は入れ替わり、その年の総大将によって百鬼夜行のカラーが決まることになります。それによって掛川百鬼夜行はさらなる輪の多層化を生み出していくことでしょう。

「百鬼夜行」という言葉が持つ意味合いに深く紐づいていますし、これからの可能性がグンと広がるクリティカルな提案だと思いました。

(僭越ではありますが、不肖私ハマも名乗りを上げさせて頂いた次第です🥺)

果たして、次回の掛川百鬼夜行はどうなるのでしょうか?
今から本当に楽しみです。

そして最後になりますが、戸田さんを筆頭に、地域おこし協力隊の芳川さん、掛川観光協会ならびに掛川百鬼夜行実行委員会の皆さま、素敵なイベントをありがとうございました!

皆々様、また来年 妖(あやかし)に扮してお会いしましょう!!!

▼掛川百鬼夜行 ダイジェスト動画(映像:匂坂さん

▼「掛川百鬼紀行」通販サイト

▼掛川百鬼夜行 公式サイト

▼掛川百鬼夜行 アーカイブサイト


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