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【持論】プロ野球選手会の日本ハムへ抗議文送付について【ノンテンダー】

2021年オフに日本ハムが西川遥輝・大田泰示・秋吉亮の3選手を自由契約にした際、球団が3選手を「ノンテンダー」という扱いにしたと発表していました。

この後、西川遥輝選手は東北楽天と契約し、大田泰示選手は横浜DeNAと契約しましたが、秋吉亮投手についてはNPBのどの球団とも契約できず、独立リーグの福井ネクサスエレファンツへ移籍しました。

この時の日本ハムが3選手を「ノンテンダー」という扱いにした件について、3/7に日本プロ野球選手会の方から北海道日本ハムファイターズに対し、抗議文が送られました。

抗議文の内容

抗議文の内容はデイリースポーツの方で以下の通り掲載されていました。

この抗議文は長文なので、日本ハムに対して直接抗議している文を抜粋しました。

上記の事実が示すとおり、本件球団の行為は、保留制度の影響により、本件球団が発表したような『選手が取得した権利を尊重』するものでもなければ、『選手にとって制約のない状態で、海外を含めた移籍先を選択できる』状況にもなく、単に選手の価値を一方的に下げるものです。そこで、当会は、本件球団が今後、選手の価値を一方的に下げるような態様で選手を取り扱うことを控えると共に、このような行為をノンテンダーなどと称し、選手やファン、社会一般に誤解を与えることがないよう、厳重に抗議しました

https://www.daily.co.jp/baseball/2022/03/08/0015117444.shtml

「ノンテンダー」が悪かった

抗議文を自分なりに解釈してみると、日本ハムが「ノンテンダー」という言葉で、あたかも選手にとってメリットがあるような説明をしていたことについて、選手会側は全くメリットが無いことだと問題視しています。
要は「ノンテンダー」と言っても、通常の戦力外や自由契約と何ら変わりがないことなので、良さそうな言葉で誤魔化したり誤解を与えるなということです。

選手会としては、日本ハムの説明で「ノンテンダー」が良いことのようなイメージを持たれてしまうと、球団側が選手を放出する口実になりやすいですし、ファンもノンテンダーを後押しするような風潮になりかねないので、それは阻止したいはずです。

だからこそここで抗議文を提出し、「ノンテンダー」という言葉を使わないよう釘を刺したのでしょう。

選手会の本当の不満は?

ただ、選手会として本当にこの「ノンテンダー」に対しての不満だけで抗議文を送ったのかというと、個人的にはやや懐疑的な印象を受けました。
抗議文からは、別の不満も書かれているように見えます。
抗議文の上記抜粋以外の部分について、以下にまとめました。

そもそも日本のプロ野球界においては、自球団のみとの契約交渉に著しく長い期間拘束される保留制度により、多くの選手は他球団と交渉すらできずに、自由契約となり、プロ野球界を去ります。またFA資格を有したとしても既に高年齢になっていることあるいは補償制度が存在することなどFA権行使に関する極めて大きな障害があるため、選手の他球団への移籍はほとんど起きません。支配下登録人数にも上限があります。  したがって、選手の移籍市場は極めて限定されており、唐突に自由契約を告げられた選手が移籍先を見つけるためには、限られた登録枠に入るため、大幅な年俸減を受け入れるなど、選手としての価値を著しく下げざるを得ません。事実、本件球団から自由契約になった2選手は、公開されている推定年俸によれば、プロ野球協約で定められた減額制限を超えて減額された参稼報酬でしか契約することができず、もう1選手については、NPBの球団と契約することすらできませんでした。

この部分は、日本ハムへ対しての直接の抗議している箇所よりも長い文章になっています。
まとめると以下の通りです。

  • 選手は入団した球団で長い期間拘束されてしまう

  • そして多くの選手はそのまま自由契約となり、球団選択の自由がない

  • FA権を取得できる頃は既に選手として高年齢

  • さらに補償制度がFA権行使に極めて大きな障害

  • 支配下登録に上限があることも移籍が活発にならない要因

  • 自由契約になると選手としての価値
    が大幅に下がる

  • 現に他球団へ移籍した2人の選手は大幅減俸で移籍した

こちらは日本ハムへの抗議についての、いわゆる前置きの部分にあたりますが、個人的な印象としてこの前置きの方が選手側の不満をはっきり書いているように見えます。

しかしこの前置き部分の不満は、日本ハムに対してではなくNPBの現行制度に対しての不満にあたりますし、本来なら日本ハムへの抗議文に不要な部分です。

しかし抗議文にここまではっきりと記載しているのは、常日頃からの選手会の不満を抗議文に含ませることで、周知させる目的があったのではないでしょうか。

NPBへ要望書も提出すべき

仮に現行制度へ不満があり、それを周知させる目的で抗議文に書いたのだとしたら、単に不満を書いただけで、正直なところ問題解決には向かいにくいです。

何故ならこの抗議文から日本ハム側ができる対応としては、今後「ノンテンダー」という言葉を使わないだけです。
西川・大田・秋吉の3選手のような選手が今後現れた際は、ただ単純に戦力外にするだけになります。

前置き部分の不満を読むと、それだけが選手会側の望みとは思えず、以下のことも望んでいるのではないでしょうか?

  • 現行のFA権取得年数の短縮

  • 人的補償制度の廃止

  • 移籍活性化へ向けての取り組み強化

  • 支配下登録枠の拡大

  • 安易な大幅減俸や自由契約に対して制限

もし上記を要望するなら、日本ハムへの抗議文に記載するのではなく、NPBへ要望として出すべきです。

そうしないと選手会側の本意がNPBやファンにも伝わりづらく、今回の件は単に「ノンテンダー」という言葉を使えないようにしただけで終わりです。

交渉の窓口を開くように

今回のように選手会が日本ハムに対して抗議文を送ったり、現行制度への不満があることを表明することは、今後のプロ野球に所属する選手たちにとって、問題提起に繋がる良いことだと思います。

ただ、そうした抗議や不満を表明しただけでは次に繋がりにくく、改善へと向かいにくいです。
日本ハム側は抗議文を受けて、選手会と対話を行う動きを見せました。

こうしたリアクションがあることは選手会にとっては要望を具体的に伝えやすくなり、有益なことのはずです。

しかしTwitterで選手会はこのような反応を見せました。

球団側から対話をしようという提案が出たのに対して、選手とは対話しなかったじゃないかと不満を書くことは、今後の対話への阻害になることで正直良いこととは言えません。

不満は分かりますが、不満だけを伝えても改善には繋がらないです。

球団との話し合いの場を設け、選手の要望を球団に浸透させていくことで、選手の環境改善に繋がります。

例えば、日本ハムとの対話で「ノンテンダー」の禁止以外にも以下のことを提案してみたらどうでしょうか?

  • 自由契約の通告や契約更改時、選手会選出の第三者立ち会いの義務化

  • 自由契約となった選手について、他球団が再獲得する際は1人まで支配下枠に含まれない(人数は要検討)

今回の件で球団と選手の間で、認識齟齬があったことは明白です。
こうしたことを無くすために、選手と球団側だけでなく、第三者がいる状態で契約の話をするよう変更することは大事です。
これによって認識齟齬を無くすことに繋がります。

もう1つは自由契約選手への優遇措置で、戦力外で自由契約となった場合、他球団は1人までなら支配下登録枠と別で特別枠を用意して、獲得できるという制度です。
球団側は支配下登録枠を圧迫することを恐れて、自由契約選手を獲得しづらくなっている可能性があるため、これによって幾分自由契約選手を獲得しやすくなるでしょう。
こうすることで、選手にも球団にもメリットが生まれやすいです。

これは単なる野球好きのファンが考え付いたことですし、選手視点ならもっと他にも提案できることはあると思います。
そうした提案を都度、球団側と交渉することで、認識齟齬が減り、選手の要望が伝えやすくなるはずです。

一方的な抗議よりも、積極的に交渉してお互いにとって良い環境作りを目指していくことが、何より選手たちにとって良いことだと思います。

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