見出し画像

David Copperfield (1849)

長いお話であった。Henry FieldingのThe History of Tom Jones (1749) も長かったけど。お話というか主人公のキャラクターとしてはTom Jonesの方が好きかなあ。だけれども読み終わってしばらくして、ふと書き残しておきたい気持ちが湧いた。

小説ではDoraは若くして死んでしまったけれど、そうでない人生もDavidなら幸せに暮らせていたんじゃないかなぁとなんとなく思う。

自分にとってはそれほど難しいことではないように思えることも、それをどれだけ真心を込めて説明しようとしても他の人々にはどうしても伝わらないということがある。「それほど難しいことではない」と言ったように、そもそもの話が簡単ではない。自分自身のことから始めようということ。世の中の人間(生き物全部かな?)は須らく一生懸命生きているんだということ。自分以外の人々のことをあれこれと考えたり想像したりするなら、みんなそれぞれ一生懸命生きているんだということは外してはならない。その絶対条件を外してしまえば、ほぼ無限に私たちの考えは自由に広げられてしまうから。そうした無制限に広がる想像は、どうしてもやさしいばかりではいられなくなってしまうから。

方程式としてみればとてもシンプルに見える。何を置いてもまず自分自身について面倒を看ること。自分以外の生きているものは須らく各々のやり方で一生懸命生きているということ。シンプルなだけではなくて、このシンプルな式を二つ心に留めておいた方が、自分もその他の生き物もより幸せに生きて死んでいくことができるのだと信じている。

けれども私たち人間の頭は方程式が機能するようにははたらかない。方程式に従えば「幸せ」という解に至ることは必然であるのに。

21世紀の今も戦争は止まないし、お金というものが人々の死活問題を支配するようになってしばらく経つのに未だに上手に使えていないし。民主主義にしてもそう。二つの方程式なんかでみんなが幸せになるなんて誰も信じはしないだろう。

Agnesみたいな人間は現実世界には存在しない。けれどもDickensがそれを描いたんだからそれは素直に存在するものとして受け入れよう。間違っても現実の誰かさんに(まだ逢えていない人も含め)投影するなんてことはしないで。世の中に救いが全くないわけではない。その程度にとらえておこう。

私だって私なりに生きて死んでいくことしかできないんだ。それ以上も以下もない。しんどくなったら本でも読もう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?