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揺蕩。


境目のなかった昨夜と今朝の波間で
始発のガタンゴトンを
揺蕩いながら聴いた


青白く染まっていく部屋に
溶けないように起き上がる


諦観と期待を乗せたガランとした電車
そこになぜだかいるような感覚を
白湯を沸かしながら脱ぎ捨てる


鳥の囀りが通り過ぎる窓辺で
喉を通る熱が現在地イマ、ココを教える


水も取り替えられない花瓶の中で
いつもなら早々に色褪せるはずの薔薇が
青白い部屋の中で棘を隠す


現在地から
あと何度この心臓が動いたら
還れるのだろう


冷たい棘に触れながら
熱い白湯を与えながら
この体はどこに運ばれていくだろう


考えるともなく浮かぶ
答えのない問い
思い出される日々のあれこれ
くたびれた記憶


顔も知らない誰かの日常と
隣り合わせのこの青白い部屋で
溶けないように私を守りながら
愛すべきすべてを愛しながら


この世界を泳ぐ人の
愛しさと愚かさに
嘆きと祈りが滴り落ちる


二度とない今日という一日の中で
もう何度目かの
ガタンゴトンを聴きながら







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