未来2018年4月号詠草
お互いの影を浴びあう綿棒に冬の陽ざしはさしこむほそく
さざんかがかたく握ったうす闇に指をさしいれようとして 雪
粉雪は降るというよりなんだろう風に揉まれてひかっている
道端の繭をあばけば事切れた蛾はまさ夢を見た顔をして
手についた手摺の錆を嗅ぐときの内に収斂していく感じ
水溜(みずため)の淵の小石はあおく濡れもう諦めたような清しさ
足長蜂(あしなが)の口は精緻に噛み合ってわたしのことも殺してほしい
雨粒にみぞれの混ざる夜なので読まない本を手にしてしまう
あちこちで本がかぼそく鳴き交わし頑張らなくてここはちょうどいい
温室の灯りが漏れて一帯は死後行く場所になってしまった
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