未来2018年9月詠草
カーテンを開ける前から雨だった追突事故の夢ばかり見て
受話器から呼出音が鳴る前のしじまのなかで安らいでいる
電灯がちらついているそのなかに満ちるひかりの粘度を弱め
肌寒いエレベーターで夕焼けにまみを濡らしたひととゆきかう
コンビニでお金をおろすひとを待つ電柱の影にぶった切られて
巻き添えになる結露たちひと粒がグラスを滑り落ちてゆく間に
飲み物に刺さった花が恥ずかしく置けばそこだけ墓前のような
絞られた檸檬から種は身をよじり昏い皿へと落下してゆく
貝殻は芯まで乾きパエリアの跡地で天を仰ぎ見ている
線状に光の粒は偏ってどこまでが夜空かわからない
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