未来2018年11月詠草


日々はひかって

品書きをこちらに向けるひとの手は爪がすずしく揃えてあった
焼き鳥は串を離れてその串がかつて刺さっていた小さき穴
さびしいと言えば波立つ川がありあなたはそれを岸で見ている
中座したひとを待つ間に硝子戸を小雨がつたいきってしまった
島と島のような遠さだ頬骨に落ちた睫毛を教えずにいる
半熟の黄身は触れれば決壊し今日の総てがそういうふうな
伝票を手にしたひとについて行く泥濘をゆくように無言で
走り出すような気がした 前のひとが小銭を拾うためにかがめば
くっついたDARZを剥がす驟雨から遠く隔てられたリビングで
だとしても日々はひかって保冷庫を開けたあなたの鼻先にある

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