未来2018年5月詠草

雪風に頬を晒せばひろびろとひらく私という展開図

錠剤のシートの穴は受けとめた朝のひかりを皺にしている

蜘蛛の巣のうえでばらけた水滴は暴れる蝶の脚を濡らした

私だけわかっておらずひそやかに修正液の匂いは迫る

小走りで駆け寄るひとを待つあいだ陽射しがふうと匂っていた

なにもかも忘れてしまう藻の浮いた池に硬貨が沈むはやさで

下敷きを床に落とせばそこだけが氷のようにひかっておりぬ

鍵穴のなかで起こっていることを思えばふいに伸びてくる影

電灯が消えれば夜は音もなくながい廊下を浸してしまう

逆光の重機がふいに傾いて私を潰すような気がした


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