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初体験 クリーンセンターの巻

 今春、息子が大学を卒業予定ということで下宿している私の実家を出るのですが、入れ替わりで今は家から大学に通っている娘が実家に住むことになります。私からしたら両親と子どもの双方の生存確認ができてちょうどいいのです(笑)

兄妹2人は狭すぎる

 最近は兄妹2人ともが実家にいたりして、2人の小競り合いがうっとおしい……で、これを機に実家の2階部分をしっかり片付けようということになりました。
 実家は昔の家なもので階段はかなり急でしかも回旋せずまっすぐ。年老いた両親が2階へ上がることはありません。母は車いすユーザーのため100%無理です。だから今では母の婚礼ダンスは意味をなしていない状態なのです。そして和ダンスに入っている着物たちは、小柄な母に合うように縫われたもののため、私や娘には裄(ゆき)が合わず着られないものばかり。リメイクとかしたら地球に優しいけどなかなか厳しく、母に婚礼ダンスと着物たちをどうしようか相談して、全部確認してもらい処分することにしました。捨てるのは心が痛むので、着物のプロにお願いして、中身はそうやって整理がついたのでした。次はタンスです。なにしろ階段がせまくて急なので、下へ降ろすことがむずかしく、どうしようか思案したのですが、ネットで調べたら業者の方に依頼できることがわかったので早速見積りをしてもらったのです。
 どれぐらいの金額を想像します? ネットにはタンスは海外で売れたりするので下取り価格を提示しますといった表現をされていたので、あわよくば、作業費と相殺できて、そんなにかからないのでは……とめでたい試算をしていたわけです。
 が、タンスは買い取りの値はつかず、運び賃と処分費が必要になるということで、見積の金額は、私の想像をはるかに超える良いお値段でした。あまりの高額に私は声も出ず、腰を抜かしそうになりました。(作業内容や時間、それから処分費を考えたらわかる話ですよね 。汗)

自力でやるしかない

 「これは簡単に処分できないわ」ということで、再度家族会議をして、タンスはそのまま下へ運ぶのではなく、2階で分解して小さくして運び出すことにしました。
 実際にやってみると、思ったよりは短時間で分解できて、次の段階はいよいよ処分です。2階から降ろす作業も処分も自分たちですることにしたので、見積をしてくださった業者さんから教えていただいていた京都市のクリーンセンターに持ち込んで処分するのがよいということになりました。

 「今週末行くぞ!」という主人の号令で、軽トラで出動することになり、分解したタンスだけでなく、使わなくなったホットカーペットや扇風機、健康器具など実家に置かれていた不要になったものをどんどん積み込んでクリーンセンターへ向かいました。
 まもなく到着だなぁと思ったその時、持ち込んだごみの処分の申込書を書く小屋っていうか建物っていうか、そういうスペースを見つけました。私たちはあらかじめ申込書は記入して持っていたのですが、ふと「身分証明書の提示をお願いします」という立て看板が目に入り、そこにいる人に尋ねてみました。

私 「すみませーん」
職員さん 「・・・・・・」
私 「あれ?」「すみませーん」
職員さん 「はい?」
私 「身分証明書はどこで提示するのですか?」
職員さん 「クリーンセンターの入り口だと思いますよ」
私 「ん? だと思います?」
職員さん 「私もはじめてなので」

え? はじめて? 

そうなのです。その人、職員さんじゃなかったんです。
一般人。私たちと一緒。利用者(笑) 
やーん、はずかしい。
というわけで、そのまますごすごとクリーンセンターの入口へ進み、いよいよ施設の中へ。

 私の中では、行けばすぐに処理してもらえるもの、というイメージだったので、入り口に向かって進んでいったときは自分の目を疑いました。だって高速道路の料金所みたいに、ズラ~ッと車が並んでいたんです。こんなに利用する人が多いのか~とほんとびっくりしました。
 と、同時にもうひとつ、私のイメージとは違うことがありました。軽トラに山盛り積んでいるのは私たちだけで、他はみんな乗用車だったのです。とっさに「これ家庭ごみとみなしてもらえるのか?」と、とても不安になりました。(正真正銘の家庭ごみだったんですけどね)
 そうこうしているうちに料金所のようなところも通過して、いざ処分場へ! なんせ初めてなもんだから、次どこへ行けばいいのか、何をしなければならないのかわからない。次にどこのレーンに進むのかすら、アタフタして「一方通行で後戻りできません」という表示を見て「分別しながら捨てていくのか? やばいぞ、なにもかも一緒くたにぶっこんで積んでいるやん。後続車にものすごい迷惑をかけることになるのでは……」と汗汗
 そこで働いておられるおっちゃんからすれば、軽トラに山盛り積んできた私たちは常連さんに見えたのか、早くしてください的な冷ややかな目がとっても痛かった。「こっちははじめてなんよ!」とは言えず、ペコペコしながらなんとかひとつずつクリアしていきました。
 私たちの不安は的中せず、心配したいろいろは取り越し苦労で、なんて言ったらいいのだろうか、でっかい倉庫みたいなところに車両ごと入っていく簡単なシステムでした。
 中へ入っていくと両側に大きな掃き出し窓のような、壁があいている場所があって、その掃き出し窓のそばに車を止めて、そこから下にどんどん持ち込んだものを落としていくというスタイルでした。
 「私落ちたら終わりな」っていう高さだったので、お尻がキューってなりながらの作業でしたが、どんどん落としていけばよいというもので、あっという間に作業は終わりました。
 落下した先はベルトコンベアみたいに地面が流れていて、落としたものはどんどん流れていくのが見えていました。
その光景は「トイストーリー3」でウッディたちが運ばれてしまったゴミ処理場を思い出すもので、ベルトコンベアで粉砕機で粉々にされてしまいそうになったり、最後に巨大な焼却炉が待ち受けていたあの場面とめちゃくちゃかぶって、私の頭の中で妄想がグルグルしていました。気がつけば「みんな、ありがとう。長い間お世話になりました」と、心の中で御礼を言っていました。

ひととおり終了して思うこと

 軽トラの荷台は空っぽになり、なぜか大きなイベントが終わったような、そんな気持ちで実家に戻りました。かつては両親の寝室だった部屋は引っ越した直後のように声が響き、ちょっとさびしくなりましたが、新しい生活が始まる清々しさもあって、疲れたけどなんとなくやり遂げた感を感じていました。

 いろいろ経験させてもらえるわ。しみじみ思うし、これからも終わっていくこと、新たに始まること、そういうのが交互に続いていくのだろうなぁなんて考えてしまいました。
 ひとりで生きていたら、こんなことしなくてもよくて楽かなぁなんて思ったりするけど、ひとりじゃないからこそ感じる喜びがもちろんある……
ほんと生きるって大変。そんなことを思うクリーンセンター体験でした。

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