見出し画像

長年続けている趣味や、特技はなんですか?

たまに、初対面の人やマッチングアプリで出逢った人に表題の質問を訊かれる。
この質問、私にスポーツや勉学の才があれば「トリリンガルです」
「流体力学を少々」
「ダイビングのライセンスを持っています」「合気道で黒帯なんですよ」
など見栄えの良い特技を話すことができるのだが、生憎そういった才がないので、実はとても返答に困るのである。
それと言うのも、私が特技だと思っているものは一人ですることが難しく、環境が整っていないとお見せすることもできないものだからだ。
(また、仮にその場で披露した場合でも、きっと見せられた方は反応に困るだろう)

ここで質問です。ここまで引っ張った私の特技は一体なんでしょう?

どぅははは。すぐに答えると思いましたか?
良ければもう少しだけ考えて欲しいので、予想をしてみてください。


では、心ばかりのヒントを

自分で言うのも恥ずかしいが、私は生まれつきの声質のおかげでガチャガチャした空間でも通りやすい声をしている。
居酒屋で店員を呼ぶときや、舞台上で弁護士の役をしたときなども(セリフとして、聞かせるために喋る)早口や長台詞は聞き取りやすいとよく褒められた。
なんだか8割くらい種明かしをしたような気がするが、今日はこの高校時代の演劇部で出逢ったツレたちとの愉快な思い出話をしたい。

初めて友人の結婚式に参列したのは、25歳の時だった。高校時代にいつメンだった5人組の1人で、演劇部の幽霊部員と裏方(メイク、小道具、衣装)、そして(仮)入部のまま演劇部に居座っていた私という不思議なメンツだ。
この中で衣装を担当していた、なりちゃんが今回のヒロインである。
グループラインで「結婚式開催するので、集合~!」となりちゃんから号令がかかったときに、時を同じくして彼女から私宛に個別のラインが来ていた。
もしかして、新婦側の受付や友人代表のスピーチを頼まれるのだろうか?とソワソワドキドキしてラインを開くと、書かれていたのは以下の内容だった。

『はなち~、新婦側の余興は頼んだよ』

よ‐きょう【余興】
宴会などで、興をそえるために行う演芸
興があとまで残ること。
「—尽きざるによりて、今一日御逗留あるべきよしを申さるるを」〈十訓抄・一〉

出典:goo辞書

スピーチでも、受付でもなく余興。
無論、私に断る選択肢などない。(私には、高3のときになりちゃんの誕生日祝いとして彼女の机の中の教科書を全てロッカーに押し込み、代わりに机の中身を180本のうまい棒を詰め込んで困らせた前科がある)
断れるはずがないのだ。

かくして、なりちゃんの余興としていつメンたちにヘルプを要請し、ダンスや寸劇、ラップバトルなど色々協議をした結果、決まったのが「愛の五分間クッキング」という即興で手作りジュースを作るというものだった。


当時作った進行表

というわけで、私の特技は【司会/進行】なのである。(思いのほかネタ晴らしが早いと突っ込んだ方へ、すみません)
歌・ダンスは私以外のツレたちはみんな裏方だったということもありすげなく却下され、ラップバトルは誰もそもそもラップを作れず、ボイスパーカッションもできないことが判明したので諦めざるを得なかった。
結果的に、捻り出したのがこの「愛の5分間クッキング」と名付けたクソ迷惑な余興である。保育士をしているなりちゃんは、子どもが大好きなので結婚式には珍しく参列者にもたくさんのちびっ子たちを呼んでいた。
これは、アラサー女子たちの大きな助っ人になる。彼(彼女)らの力を借りれば会場は盛り上がり、新郎新婦の親族たちの印象も頗る良くなることは間違いない。
メイクの風見ちゃんは手先が器用で、料理の手際もピカイチ、小道具のみぃなはマスコット的存在でとても気が回る子なのでマイク回しもお手の物。そして、幽霊部員の伊豆さんがミキサーと音楽という一番大事なものを調達してくれることになった。
4人のプロフェッショナルが、なりちゃんのために力を出した結果、ジューンブライドに因んで6種類のゲテモノを混ぜたシュレックカラーのジュースが完成した。なりちゃんと新郎のアルパカくんは、めちゃくちゃ笑顔で「乾杯」と言って、二人でそれをケーキのように飲みさせあって、飲み干した。
最後まで不味そうな顔をしていなかった彼女は、この舞台のヒロインとして素晴らしい役者魂だと思う。

さて、それから5年の月日が経った現在。
なりちゃんたち演劇部メンバーとオンライン飲み会を開くことがあり、当時の話になった。
私が、あの時のジュースは美味しかったか?と訊くと、なりちゃんは間髪入れずに「くっそ不味かった」と答えて、みんな笑った。

「はなち~のときには、アタシが余興するから任してな。5年ぶりのクッキング楽しみにしときぃや」

まだ相手もおらず、そもそも結婚式をするかどうかも分からないけれど、未来の夫に自分が蒔いた壮大な種を共に回収して貰うこととなり、大変申し訳ない気持ちになった。
結婚式の余興であれば、「令和はジャンボリーミッキーしかない」と力説したのだが、みんなから総スカンを喰らったので愛情を込めたゲテモノジュースになる可能性が高そうだ。

未来の夫をゲテモノジュースから守るために、まだ当分結婚はしないでおこうと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?