見出し画像

ちょっと意外、だけどいつものシアーシャ・ローナンだった

映画『アンモナイトの目覚め』をオンライン試写しました。

19世紀前半、古生物学者としてその名を知られていた、メアリー・アニング(1799年5月21日 - 1847年3月9日)に焦点を当てたフィクションです。

メアリー・アニングは、貧しい労働者階級の女性でありながら、重要な魚竜の化石を次々に発見し、初期の古生物学に大きく貢献しました。論文の発表は認められませんでしたが、死の数か月前にロンドン地質学会の名誉会員に選ばれました。ロンドン地質学会が女性の入会を認めたのは、1904年なので、極めて画期的なことだったようです。

メリル・ストリープ主演のん『フランス軍中尉の女』(1981年)も、メアリー・アニングをモデルとした作品です。メアリー・アニングは、生涯独身だったそうです。非国教徒だったので、キリスト教のタブーから自由なキャラクターを描きやすいのでしょうか。


さて、本作の同性愛は監督のアイデアで、ケイト・ウィンスレットとシアーシャ・ローナンが素晴らしい演技で応えています。


ここからはネタバレを少々。

メアリー(ケイト・ウィンスレット)は生活のために観光客の土産物用アンモナイトを探して売っています。その店を訪れた、ロンドンの富裕な化石収集家のロデリック・マーチソンが、うつ病になった妻のシャーロット(シアーシャ・ローナン)を預けます。

メアリーの衣装はブルー系の地味な色が多く、コルセットなし、スカートの下にズボンを履いています。素材は厚手のコットンです。

シャーロットの衣装は繊細な装飾がほどこされたシルクのドレス。コルセットをつけています。アニング家に預けられたときは、黒いドレスに身を包んでいて、口数も少なく……シアーシャ・ローナンが今まで演じてきた役……たとえば、『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』のジョー・マーチ……から、あまりにもかけ離れていますが、透き通るような肌、華奢な骨格が際立っていて、儚げな美しさを醸し出していました。

家事なんてしたことなさそうなシャーロットですが、アニング家に預けられると、積極的にお手伝いをしようとします。あまり役に立ってないし、かえって邪魔になっているのですが、メアリーと一緒に過ごすうちに、健康を取り戻し、彩りのあるドレスを身につけるようになり、シアーシャらしいキラキラとした表情を取り戻します。本来のシャーロットは、『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』のジョー・マーチや原作者のルイーザ・メイ・オルコット(1832年11月29日 - 1888年3月6日)に、ちょっと似ているところがあるのかもしれません。

シャーロットは、夫のロデリックを通して社会を見てきたので、化石の知識はそれなりにあるようです。メアリーの仕事の素晴らしさに素直に感動し、人間的にも惹かれ合い、やがて2人は恋愛関係になります。同性愛に戸惑う描写はなく、依存する関係でもないので、2人とも精神的には自由で自立しているようです。

シャーロットが良かれと思って行ったことが、メアリーをひどく傷つけてしまいます。シャーロットの無邪気さによって、2人の間に横たわる厳しい現実があらわになります。ラストは観客の想像に委ねているので、人それぞれ解釈が異なると思いますが、私は希望を感じました。

恋愛関係は終わったのもしれませんが、シャーロットはメアリーを支援し続けたのではないかと思うのです。なぜなら、最初に書いたように、メアリー・アニングは、古生物学者として名を残すことができたからです。

画像1


映画『アンモナイトの目覚め』
https://gaga.ne.jp/ammonite/

公開日:2021年4月9日(金)[R15+]
脚本・監督:フランシス・リー
出演:ケイト・ウィンスレット、シアーシャ・ローナン ほか
配給:ギャガ

応援してくださる方の投げ銭お待ちしております。