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PERFECT DAYS

うっすらと明けた夜明けと共にまぶたが開く。

外が明るく寝坊したかなと思ったが、枕元の時計は、まだ4時半だった。
布団の中から手を伸ばしカーテンの裾をちらっとめくると外は久しぶりの本格的な雪だった。

雪がレフ板となって早朝の街灯や月明りの光を反射させ、外を明るくする。普段なら、こんな日は、まず、走ることが億劫になるところだが今朝は、
布団から出る事に躊躇はなかった。

映画「PERFECT DAYS」を観に行った。ヴィム・ヴェンダース監督、役所広司主演の映画だ。

役所広司演じる平山は、東京都の公衆トイレの清掃員だ。

その平山の日常を淡々と描いていくのだが、最初から最後までキャベツの千切りが完璧にいった時のような心地よさで観終わった後も、しばらく余韻が覚めなかった。

映画は、登場人物に観るものの生き方を、なぞらえる事が多いほど没入しやすいがPERFECT DAYSには、そんなシーンが随所にあり、平山の生き方には、自分もこんなふうに生きていけたならと思わせるスマートさが滲みでている。

怠惰な自分が出てきた時、平山ならどう生きるだろうと想像したくなる。

特に平山が朝、目を覚ましてから仕事へ向かう為、玄関を出るまでの冒頭のシーンは、毎日のルーティンを大事に積み重ねることが、とても洗練された美しい華道や茶道の所作のようにさえ見える。

平山の動きは無駄がなく、淀みがない。この映画の冒頭のシーンがあまりに鮮烈に頭に残り過ぎて、私も今朝の走り出すまでの動きは、平山を模したかのように滑らかだったというわけだ。

普段はやらない、起きがけの歯磨きもしたぐらいだ。
(平山は起きてすぐ歯磨きをする)

それぐらい、この映画を観た後では、自分の何気なく行っているルーティンが愛おしくなる。大切になる。

もう少しだけネタバレすると平山は、仕事場へ向かう車の中でカセットテープを聞くのだが、平山が大事にしている音楽と時間が朝の東京の風景と共に流れていく。

私も(どうしてもなぞらえたくなる)朝ランニングに向かう際、ガーミンに入れた音楽を聴きながら走る。音楽の中で流れていく函館の街や海の風景が好きなのだ。

最後まで観終わったあと、この映画を通して人生の大切なものをあらためて教えられたのだが、この映画は決っして押しつけがましい映画ではないので、観る人によって感じ方も人それぞれだろうなと思う。当然退屈だと感じる人もいると思う。

しかし改めて、私には、もっと丁寧に大切に、今という瞬間を生きようと思わせてくれる映画だった。

さあ、今日も走りに行こう。自分の大切のものを重ねにいこう。
同じように見える毎日にも、明暗があり、陰影があり、濃淡があり、
歯茎に滲む鮮血がある。(ほれ、慣れないことするからだ)

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