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早歩きをすると、脳を元気にする物質がドバーッと出る

◆内出血

内出血で皮膚科を受診する人があります。
その多くは高齢者で、手の甲や腕にできる、大きさ3~5cmの濃い紫色の内出血です。

加齢に伴い、毛細血管が脆弱になり、ちょっとぶつけただけでも内出血します。
しばらくすると出血が止まるため、大事には至りませんし、痛みもありません。
これがもっと太い血管からの出血ならば、大変なことになったかもしれません。

◆毛細血管

心臓から送り出された血液は、動脈によって全身の細胞に送られます。
最初は太さ3㎝の大動脈ですが、細い動脈へと枝分かれして、最後は毛細血管になります。

毛細血管は一番細いところで5μmです。
これは、髪の毛の太さの10分の1です。
全身の毛細血管をつなげると、その長さは10万km(地球2周半)とも言われます。(諸説あり)

加齢とともに血管はもろくなり、出血しやすくなります。
細い血管からの出血ならば、健康上、問題ないのでしょうか。

◆脳の微小出血

加齢にともない、脳にアミロイドβが蓄積し、
それが細い血管を傷つけて出血を起こしていることが確認されています。
これを「微小出血」と言います。

太い血管から出血すると脳卒中になりますが、
ごく細い血管から出血する微小出血は、自覚症状がありません。
しかし、出血した部分の神経細胞は死ぬため、
徐々に脳内のネットワークが壊れていきます。


正常な人でも微小出血は見られますが、
認知症の進行にともない、その数は増してきます。

◆脳細胞は再生しない

皮膚、髪の毛、爪は、容易に再生します。
髪の毛や爪を切っても生えてきます。
表皮の細胞も、日々作られ、約1か月で入れ替わっています。
それと比べて、歯(永久歯)は折れたり抜けたりしたら、
二度と元に戻りません。

脳の細胞も、原則、死んだら再生しないと言われています。
脳の細胞が、皮膚のように、次々と再生したら、
認知症になる人はいないでしょう。

◆早歩きが神経と血管を元気にする

早歩きによって、脳が若返ることが分かっていますが、
それはどのような仕組みによるのでしょうか。
早歩きによってスイッチが入り、「脳由来神経栄養因子」「血管内皮細胞増殖因子」が作られることが発見されました。

「脳由来神経栄養因子」とは、脳から出る、脳の神経細胞に栄養を与えてくれる物質のことであり、これによって弱った神経細胞が元気になります。
「血管内皮細胞増殖因子」とは、血管を構成している細胞を増やしてくれる物質であり、これにより、脳に新たな血管が作られ、血行が良くなります。
これらは一言で言うと、「脳の神経と血管を元気にする物質」です。

早歩きをすると、その物質がドバーッと出てくれるという、なんとも有難い話です。

みなさん。「早歩き」「ドバーッ」で、認知症を予防しましょう。

参考文献
1)青柳由則:『認知症は早期発見で予防できる』, 文藝春秋,2016

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