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〔介護を学ぶ3〕怒り、心配、不安の心が揺れ動く

長寿社会を実現した日本において、
介護と関係ない人は、ないと言ってもいいでしょう。

30~50歳代の人が、始めて介護に接するのは、
親同士の介護ではないでしょうか。
ある事例を通して、介護を学びたいと思います。

  父59歳       母57歳     惣子さん(主人公)31歳    妹27歳 

惣子さん(主人公)のお父さんは、脳梗塞で右半身と口にマヒを残し、
リハビリ生活となりました。

お父さんを献身的に介護をするお母さん。
惣子さんは結婚して別居しており、
時々実家に帰り、様子をうかがっていました。

始めて「介護」に遭遇した惣子さんに去来きょらいするのは、「怒りの心」でした

◆お父さんが悪い

惣子さんの脳裏に、過去の出来事が思い出され、
お父さんを責めてしまいます。

 脳梗塞になったのは、元はといえば、日ごろの不摂生でしょ
 ビールばっかり飲んで、肉ばっかり食べて
 野菜や納豆は食べないし、食べたらすぐに寝るし
 休みの日はゴロゴロして、運動はしないし
 人間ドックは受けないし、体調悪くても病院にも行かない

 病気になって当たり前、自業自得
 お父さんのせいでお母さんかわいそう
 私たちにも迷惑かかっているし・・・

これは惣子さんに限ったことではないでしょう。
人は苦しみがやってくると「犯人さがし」をしてしまいます。
「介護」という今まで経験のない出来事を突きつけられ、
その重荷のあまり、犯人さがしをして、責めてしまうのです。

介護となったお父さんの様子を見てみましょう。

◆わがままで短気なお父さん

「自分がこんなことになり、みんなに迷惑をかけて、すまんのー」

そんなお父さんではなかったようです。

・リハビリの先生の言うことをきかない
・自由にならない体に腹を立て、箸をぶつける
・足に糖尿病による潰瘍があるが、薬をぬらない

「わがまま」で「短気」、それでいて周りに八つ当たりをするお父さん。
惣子さんには、そうとしか思えなかったのでしょう。

お父さんが、足に薬をぬってくれているお母さんの頭を蹴ったとき、
惣子さんの堪忍袋の緒が切れました。

「なにやってんの
 誰が世話していると思ってんだ!
 母さんに入れ歯まで洗ってもらっといて
 その態度はなんだ 少しは感謝しろ!
 施設に入れるぞ」

ぶち切れた惣子さんは、お父さんに罵詈雑言ばりぞうごんをあびせてしまいました。

◆怒り、心配、不安

「その態度はなんだ! 少しは感謝しろ」
こんな心になるのは、決して惣子さんが優しくないからではありません。
それどころか、お父さんを心配する心の裏側とも言えましょう。

 これからお父さんはどうなるんだろうか。
 体は良くなるんだろうか。
 お母さんへの負担は大丈夫だろうか。

先の見えない不安、両親への心配、そこからくる怒り。
それらの思いが、揺れ動いているのでしょう。

「介護」に一歩足を踏み入れた惣子さん。
このあとどうなったのでしょうか。

参考文献
1)上田惣子:『マンガでわかる介護入門』,大和書房,2021

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