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学芸美術 画家の心 第53回「ウィリアム・ターナー ヴェネツィア、ドガーナから見たサン・ジョルジョ島、日の出 1819年」

  この絵を見た瞬間、タイトルからして間違いなく印象派の絵だよな。何も知らず、何も考えずにこの絵を見れば、印象派の画家が描いた絵としか思えない。

模写「ヴェネツィア、ドガーナからみたサン・ジョルジョ島、日の出」

 ターナーは1775年イギリス ロンドンに生まれ、子供のころより絵が得意で、25歳という若さでロンドンアカデミーの会員となるイギリス屈指の名画家だ。

 ターナーは田園風景や海の景色を描くのに輝かしい色彩を用い「光の画家」と呼ばれた。

 この絵はヴェネツィア サン・ジョルジュ島の日の出を描いたものだが、「日の出」といえば、モネの「印象 日の出」が有名だ。モネの「日の出」は1872年に描かれた。
 ターナーがイタリアを旅行し、「日の出」を描いたのは1819年。この当時、印象派は影も形も存在していない。彼は何を思いこの絵を描いたのだろうか。
 そしてターナーは、ロマン派という時代区分に属していた。

 ところでモネはターナーの絵を知っていたのだろうか。ターナーの絵を知っているものがモネの絵を見れば当然、多大な影響を受けたと想像する。しかし、印象派が発足した1872年当時、そのような話題が出たという記録はない。

 文化の先進地であったフランス、英仏百年戦争を戦ったフランスのパリに住む人たちから見れば文化の後進国であったイギリスの画家など眼中になく、話題にすら上らなかったというのが真実だったかの知れない。

 モネの絵より半世紀も早く先取りしていたターナーであったが、再評価されるのは一世紀ののちになる。

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