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模写の風景 画家の心 第25回「ポール・ゴーギャン いつ結婚するの 1892年作」

 ゴーギャンはゴッホとの共同生活を終え、3年後の1891年にタヒチへと旅立つ。そして、この地で彼の代表作が次々に作成されていく。まるで突如として開眼したように。

 この絵はゴーギャンがタヒチに着いた翌年に描かれたものだが、模写していくとピンクの女性が右手の中指を立てているのに気が付いた。このサインはいったい何を意味するのか。それに、結婚するのと、尋ねられたわりにはこのふたり、決して嬉しそうな顔をしていない。何故だ。

 タヒチで中指を立てるのは、侮蔑もしくは侮蔑に対する攻撃を表すそうだ。
 そういえば、前にいる人物は上半身ほぼ裸だ。ということはかわいい顔をして、耳にブーケを付けているが若い男性だ。この男は恋人を守るためか、いつでも立ち上がれるように左ひざを立て身構えている。

 ゴーギャンは右手の意味を知らなかった。知っていれば、モデルにあの手の形はさせないだろう。
 事実はこんなところかろうか。若いふたりはデート楽しんでいた。ゴーギャンは可愛らしいふたりについ声をかけた。「いつ結婚するの」と。

 この言葉は、タヒチの人たちには侮蔑されたと聞こえたのか、それとも単に、おっさんがじゃまだった。

 ゴーギャンはゴッホとの生活に終止符を打つと、当時世界の芸術の中心地だったパリから何もない南海の孤島、タヒチへと向かう。何故だろうか。次回この謎に、ゴーギャンの心の内から迫ってみたいと思う。


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