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古いものばかり好きな私だけど

これまで好きになったおじさま達から「あなたもずいぶん古いな」と言われることがしばしばあった。
それは私にとっては最高の褒め言葉だ。
‥‥あ、違うな。「可愛いよ」の方が嬉しいな。
でも古いな、と言われて嬉しいのは本当だ。


ー 過去の会話より ー

例1
「あなたドラマも観るの?」
「私『奥さまは魔女』が大好きなんです!初代ダーリンの頃までしか知らないんですけども‥。あと『刑事コロンボ』の旧シリーズの方とか‥」
「ずいぶん遡るね」

例 2
「エノケンって知ってますか?」
「♪ ベアトリねえちゃん〜まだ寝んね〜かい」
「古いの知ってるね」
「私、二村定一の『アラビヤの唄』とかも大好きなんです」
「古すぎゃしませんか」

例 3
「私、大晦日というか一年の暮れにはあんまり明るいものに触れたくないんですよね‥‥。一年を振り返ってしんみりした気持ちになっているので‥‥」
「ああ、わかるな。おれもそうだよ」
「ですよね?!古賀メロディとか聴いて泣きたいですよね!」
「相当古いな、あなたも」

例 4
昔おじさまと華厳の滝に行った時に、明治時代に滝壺へ身を投げた一高生 藤村操の名前が出たので、藤村の遺書『巌頭之感』を暗唱した。
「悠々たるかな天壤、遼々たるかな古今‥‥」
「全部覚えてるの?僕は『萬有の真相はただ一言にしてつくす、曰く、不可解』の所しか覚えてないですよ。えらいな」
(心でガッツポーズ)


まあ、そんなことを知っている人はたくさんいるのであり、知性や教養などとはまったく別物なのであり、『巖頭之感』に至ってはおじさま世代に褒められるので若い頃得意になって覚えただけなのだ。
(もちろん『巖頭之感』自体、胸が震えるほど好きだけど)


たまたま自分の古い趣味とおじさま受けが一致しただけなので、自慢話みたいに聞こえたら恐縮である。
‥‥え?
自慢になってない?
むしろ引かれるところ?
‥‥。


でもしかし、なのだ。
古いものばかり好きな私だが、自分の格好などは新しいこともどんどん試したくなる。
もともと流行とは別の路線で生きているが「あ、可愛い!」と思ったり「素敵!」と思ったら取り入れずにはいられない。


10代の頃、あんまり派手な格好で出かけようとして父に注意され、
「君が漱石を好きだとは誰も思わないだろうな」
と言われる一幕もあった。


仲のいい男の先輩で、たいそう骨董好きな人がいる。
連れて行ってくれるのはだいたい小料理屋さんのようなお店なのだが、お酒や料理を注文した後、彼はおもむろに真田紐の掛かった小さな桐箱を取り出す。
自分の酒器を持って来ちゃっているのだ。
彼は大変にお洒落で派手な人なので、そんなことをするとものすごくイケすかない感じに見えるのだが(言いすぎ)、私には彼の気持ちがとてもよくわかる。
格好は派手だけど、古いものが本当に好きなのだ。
古いものが好きな気持ちと自分の格好は別なのだ。


実際、彼とその話をしたことがある。
「今日の津田の服いいね。おまえは中身が古くさいけど、外見はちゃんとしてるよな。俺も外見は常にアップデートしながら生きていきたいと思ってる」
「わかる〜〜〜!!」
「お前今タメ口きいた?」
「あっ、すみませんすみません」
私はギャグで謝っているが彼は真顔だ。上下関係に関しても古い人なのだ。


でもわかりますよ、先輩。
古くさいものばっかり好きだけど、格好はアップデートしていきたいですよね。




‥‥‥‥と、最近疲れすぎてめっきり格好に気合いが入らないので、自分に言い聞かせるために書きました。






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