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A bird |はじまり −ショートショート−

人は思い出の中では生きられないのだろうか。

「ね、テレビ見てる?見てないなら付けて!早く!」
友達のユカリが慌てた様子で電話をしてきた。
テレビをつけた私は時間も呼吸も全て止まったような気がした。
「ね、付けた?ね?ね?アカネ?……大丈夫?」

⌘⌘⌘

ユウマは泳ぎが得意だった。
世界中の海で泳ぎ回ること。それが彼の夢だった。
それなのに、彼は夏の海に沈んだ。
事故だった…。
溺れてる友達を助けるために…。
友達は助かり、何度も何度も私に会いにきた。
私は誰かに会うという気力がなく、ひたすらカーテン越しに外の世界を時々感情もなく覗くだけだった。
彼らしいなんて、そんなこと思う訳がない。
私の涙の海にユウマは生きている。
そう思うことで狂気と戦っていた。

♪手のひらに握りしめた
憂鬱に息を吹きかければ
希望の羽根をまとった
青い鳥に変わるのさ♪♪

ある日、そんな歌を耳にした。
そんなの嘘に決まってる。
世の中に青い鳥なんていやしない。
そう思いながら自分の両手を眺めてみた。

「手」10本の指、手のひら。
何をつかむために?何かをつかむために?

ユウマと手を繋いで、ユウマの髪を撫で、ユウマにLINEして、ユウマに好きと言われて触れたあなたの頬…
この「手」なの。この手は記憶してる。
その触れた感触を、温もりを、優しさを、肌の柔らかさを…

♪ 誰もが幸せになれるよ
悲しみは終わる
必ず終わるから
明日の太陽を抱きしめよう♪♪

必ず終わる。
必ず終わる。
この悲しみは、本当に終わるの?
その日私は、あの事故以来初めてゆっくりと睡眠を取ることができた。

夢の中に出てきたのは、青い鳥ではなく、ローズピンクの可愛い小鳥。
私の好きな色。
その小鳥は、私を背中に乗せて世界中の海を見せてくれた。
ギュッと小鳥の羽根をつかみながらも、ユウマが見たかった景色をしっかりと瞳に焼きつけた。

朝。小鳥の羽根を握っていた感触が手には残っていた。
「ユウマ。ありがとう。」
今なら、別れが言える気がした。


⌘⌘⌘
夢の中に出てきた小鳥は、鳥の絵を描く橘鶫さんに、cofumiをイメージして描いてもらいましたぁ🤗ちょと照れるよね可愛いから鳥が🙃

そして、ショートショートに出てきた歌は、自分で作詞した『BEGIN』です。
友達、note、Twitterで、沢山の方に、勇気をもらえたとコメントもらって、そのコメントに泣いてます😢
言葉の力って、歌の力って凄いなって感じてます。

#もうひとりじゃない  

#第3回THE_NEW_COOL_NOTER賞_10月参加

#作詞 #音楽 #ショートショート #小説   

書くことはヨチヨチ歩きの🐣です。インプットの為に使わせていただきます❤️