和式トイレへの備え

 昨日は友人たちと富士の方までドライブに行ってきた。
 富士は子供の頃にサファリパークぐらいしか行ったことがなかったので、本格的に富士の町に降り立ったのはこの日が初めてだったかもしれない。
 そんな富士での昼食は、友人が富士に行くとよく行っていたという蕎麦屋に入った。
 私は天ぷら蕎麦を食べたのだが、玉ねぎやエビのかき揚げが乗っていてとても美味しかった。
 また行きたいなあ。こんど行った時はカレーうどんを食べたい。
 その蕎麦屋で蕎麦を待っている間、トイレに行くことにした。
 浜松から高速を使って2時間ほぼノンストップだったので、さすがにトイレに行きたくなったのだ。
 友人に手引きをおねがいしてトイレまで連れて行ってもらうと、そのトイレは和式だった。
 和式トイレに出会ったのは久しぶりである。
 よく全盲だと和式トイレには入れないのではと思う人が居るが、私はけっして和式トイレに入れないわけではない。
 生まれてからの数年間は、実家のトイレは和式だったし、盲学校でも、突き当りにただ一つしかない洋式トイレに人が入っている時は、普通に和式トイレを使っていた。
 これは全盲者だけの話ではないかもしれないが、ここ10年ぐらい家はもちろん、お店や公共施設のトイレのほとんどが洋式トイレである。
 そのため和式トイレに出会う頻度が少なくなった。
 そんなわけで、昨日のように久しぶりに和式トイレに出会うと、ついつい戸惑ってしまうのだ。
 和式トイレだから跨げばいいというのは分かる。でもどうやって跨げばいいのかが分からない。
 和式トイレにも様々なタイプがあると思う。
 個室に入ったらそのまま跨ぐタイプもあれば、段差を上って跨ぐタイプもある。あるいは左右に足を置く台があるタイプもある。
 白杖(はくじょう)で探ればだいたいの構造は分かる。
 昨日のやつは、個室に入るとそのまま跨ぐタイプだった。
 それは分かったのだが、どの位置でどう跨いだらいいのかがなかなか掴めない。
「今右足がある方が前」
「そこにタンクがあるからその方向にしゃがんで」
 トイレのドアの前で友人が一生懸命説明してくれているのだが、こっちもあたふたしているので、状況をうまく飲み込めない。
 タンクやトイレットペーパーのフォルダーならまだしも、さすがに便器を手で触って確認する気にはなれない。
 結局何回も白杖で便器の周りを探って、どうにかこのトイレの構造が分かり、何とか用を足すことができた。
 トイレに行って戻るまでに時間がかかったせいで、注文していた天ぷら蕎麦を、丁度良い暖かさで食べられたのは、ある意味ラッキーだったかもしれない。

 昨日のように、久しぶりに和式トイレに出会ってあたふたしないためにも、全盲者は特に和式トイレへの備えが必要かもしれない。
 洋式トイレがたくさんあるところでも、その中に和式トイレがあったらあえて入ってみることを、時々やってみてもいいかなあと考えている。

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