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スピッツと、バンドは仲が悪いときほど名作をつくるの法則

「バンドは仲が悪いときほど名盤をつくるらしい」
大学のときに友達から聞いた法則だ。
たしか、ハードロックバンド「DOKKEN」の4thアルバムを指していたと思う。
そのときは、なんとなくそうなのかもしれないと思いつつ、理由がよくわからなかった。
モンスターバンド、メタリカもバンド仲が悪いことで有名。オアシスの兄弟も仲が悪い。そんななかで名盤「モーニング・グローリー」などが生まれるわけだから、法則はどうも正しいようだ。

時がたち、ようやく理由が判明する。
答えは多様性ですね。

「多様性」は新しい視点を生み出し、より広い空間を埋めることができる。
だから、発想が広がり、枠にとらわれず革新的なものが生まれる。
しかし副作用として、メンバーは違うタイプの人間のため、一緒にいて居心地が悪い。「音楽」のアウトプットを除けば、ストレスでしかないだろう。これが「仲が悪いときほど名盤をつくる」という見え方をする。
こういうことだな。

逆に、バンドメンバーが仲が良いと、一定の枠に収まりやすいのかもしれない。

繰り返しになるが、わたしはスピッツの曲が、ぜんぶ違う曲に聞こえる。
だけど、全部同じ曲に聞こえる人がいるのは、もしかすると、メンバーの仲が良いからかもしれない。
メンバーの実力とは関係なく、枠が出現する。

ここまで考えて、わたしは「フェイクファー」に名曲が多い理由がわかった気がした。

メンバーの仲が悪かったわけではない(と思う)が、一番迷走したときのアルバムだったことは間違いない。「ハチミツ」「インディゴ地平線」の全盛期のあと、突如陥った暗黒時代だ。
インタビュー本のなかで、ボーカルの草野マサムネ氏はこのときがつらすぎて「フェイクファー」は聴きたくないと語っていた。

本人が聴きたくないと言うくらいだから、失敗作なのかと思い、わたしはずっとこのアルバムの評価を落としていた。
だけど、どう考えてもおかしい。

「楓」
スピッツのバラードといえばこれ、松任谷由実もカバー

「冷たい頬」
「あなたのことを深く愛せるかしら」ではじまる、詞とメロディーの悶絶曲

「運命の人」
別のバンドですか?

「スカーレット」
切なさ増幅アルペジオ、ロビンソンから続くヒット曲の完成形では…


名曲が、名曲が、固まっている……。
さらにいえば、椎名林檎もカバーしたBサイドの名曲「スピカ」もこの頃につくられた曲だ。
失敗作ではない! これは、メンバーの安心の枠がないぶん、枠を飛び出すことができた名曲群なのだ。

スピッツが全部同じ曲に聞こえる問題に終止符を打つのは、この「フェイクファー」なのかもしれない。


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