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「破滅型」の人が意外と優しい説

人間は時として自分でも不思議に思うほど不合理な行動をとりがち。

悩みを相談されると、解決策を的確にアドバイスできるにも関わらず、自分の問題になるとぐだぐだ悩んじゃうなんてことありますよね。

だからこそ、人間を楽しむ前提として、「正しさ」とか「正解」とかどこの誰が決めたのか分からないルールに照らし合わせて考えようとすると、とたんにズレが生じる。

だったら、いっそのことそーいう生き物なんだと割り切って一つ一つの事象を先入観なくおもしろがればいいのでしょう。

という前提を長々書いたところで、人間の「悪意」に関する意外な事実をさくっとまとめます。

「なんであの人は…」と、自分には到底理解できない他者の行動にも、ちょっとだけ寄り添えるかもしれません。

▼人間は非合理な選択をする

「愛」と「憎しみ」は表裏一体なんて言われるように、あんなに愛し合った人同士が、ものすごい熱量でいがみ合うなんてことありますよね?

いや、きっとありますとも。

本来であれば、自分にとって大切な相手なのですから、どのような状況であっても相手の幸せを心から願うというのが正攻法。

しかし、人間という生き物は一筋縄ではいきません。

時として、大切に思うがあまり相手を絶望の淵に追い込むような行動を取ってしまうこともある。

いや、きっとあるでしょう。

このように、ふつーの精神状態で考えれば、まさか!と思うような決断をとってしまうのが僕たち人間なのです。

そんな人間の不合理さを露呈させる実験で有名なのが、ケルン大学のヴェルナー・ギュート教授が考案した「最後通牒ゲーム」。

どんなゲームなのかというと、簡単に言うと「ペアでお金を分け合うゲーム」といったところでしょう。

別々の部屋にいる2人のうち片方に10ドルを渡し、「相手にいくら渡すか?」を決めてもらいます。

この選択が1回ポッキリなので「最後通牒」というわけ。

例えば、「自分は8ドルもらって相手に2ドル渡す」と決めたのであれば、相手側には、「あなたのペアは、あなたに10ドル中の2ドルを渡すことを決めました!」とお知らせがくる。

さて、あなたは2ドルの分け前で納得しますか?

このゲームのおもしろいところは、お金の分け前に納得できなかったら「受け取らない」という選択をすることで、”相手の報酬も0にすることができる”というところにあります。

だからこそ、分け前の決定権を持った人は、自分勝手に振る舞いすぎると「報酬0」というダメージを食らうというカラクリ。

さて、あなたは「10ドル中2ドル」という相手の選択肢を、「2ドルもらえるの!ラッキー!!」と言って受け入れるのか。

それとも、「全部で10ドルなのに不公平だ!こうなったら相手もろとも…」と破滅に追い込むのか。

どちらを選びますか。

ちなみに、ギュートさんは、「0ドルでない限り、多くの人が相手の提案を受け入れるでしょう」と予想していたのですが、結果は違いました。

なんと、

「約半数の人が2ドルという金額提示を断った」

というではないですか。

もちろん、2ドルもらえた方が0ドルよりはお得。

帰り道でちょっとしたコンビニスイーツが買えますからね。

しかし、現実は、コンビニスイーツよりも、相手へのダメージを与える人も多いみたい。

なんだか執念のぶつかり合いみたいな感じがしますよね。

しかし、実験を重ねると、相手の金額提示を断った人たちに共通するある性格特性が見えてきたのです。

▼「破滅型」の意外な性格

「相手より多く持って帰りたい人」と「不公平な判断をした相手にダメージを与えたい人」の戦い。

そんな様相を呈してきましたが、現実はそれほど単純ではないのです。

もちろん、「相手よりもちょっと優れていたい」という考えは、人間とすれば当然抱きがちな思考。

やはり、集団の中で優れていることが、生きていく上で何かとアドバンテージになりますからね。

そして、「不公平な相手をどうにかしてやりたい」という判断。

一見、人間の悪意モロだしのような気もしますが、実はこの判断をする人たちほど、「集団のことを考える気遣い者」の可能性があるのです。

「いやいやいや、ただ単に自分のイラっとした感情をぶつけているだけでしょう」と思われるかもしれません。

しかしですよ、よくよく考えてみれば、自分の利益を重要視する人であれば、いくら不公平を感じても「2ドルを持ち帰る」が最大の利益なのです。

だって、自分には「2」か「0」の選択肢しかないのですから。

ということは、「2ドル」を選んだ人の方が、より自分の利益を考えた判断ができる人であり、「0ドル」を選択して自分の身を削っても相手の利益を奪い取りにかかった人の方が「集団」を意識しているのです。

もう少し言葉を付け加えると、

「より公平性を重視する人ほど、2ドル提示を破滅に導いた」

ということ。

正義感とでも言いましょうか。

2ドルを拒否した人たちほど、「この世界は公平に運営されるべきだ」と考え、その価値観に合わない取引だからこそ、自分の身を犠牲にしてまで痛み分けに持ち込んだとも見られるのです。

▼まとめ

本記事では、「交渉決裂の裏には、よりよい世界にしたい!という願いが込められていた」という内容をまとめました。

時として人間は自分の利益を犠牲にするような不合理な行動に出ることがあります。

しかし、その行動をじっくり深ぼっていくと、その人の人間性であったり価値観だったりが見えてくるもの。

行動の表面だけを見て、自分の感覚で善悪を判断すると、もしかしたら、全くズレた答えに行き着いてしまうかもしれませんよねー。



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