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譜面をみないこと(2)

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続きです。
(1)ではコードを丸暗記するのではなく、コードのコンテクスト(文脈)を記憶しましょう、という話をしました。

では、コンテクストってなんやねん、って話です。

ももたろう

昔話に「ももたろう」というのがあるじゃないですか。
さすがに21世紀の若者も、ももたろうは知ってるよね?

桃の実から生まれた男子「桃太郎」が、お爺さんお婆さんから黍団子(きびだんご)をもらって、イヌ、サル、キジを従え、鬼ヶ島まで鬼を退治しに行く物語。

wikipediaより

ネットにあるももたろうの昔話を引用してみます。
(知っていると思うので読み飛ばしてもらってかまいません)

むかし、むかし、ある所におじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは山へしば刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
おばあさんが川で洗濯をしていると大きな桃が流れてきました。
「なんと大きな桃じゃろう!家に持って帰ろう。」
とおばあさんは背中に担いで家に帰り、その桃を切ろうとすると、なんと桃から大きな赤ん坊が出てきたのです。
「おっとたまげた。」
二人は驚いたけれども、とても喜び、
「何という名前にしましょうか。」
「桃から生まれたから、桃太郎というのはどうだろう。」
「それがいい。」
桃太郎はあっと言う間に大きくなり、立派な優しい男の子になりました。
ある日、桃太郎は二人に言いました。
「鬼ケ島に悪い鬼が住んでいると聞きました。」
「時々村に来て悪いことをするのでみんな困っている。」
とおじいさんが答えると、
「それでは私が行って退治しましょう。おかあさん、きび団子を作って下さい。」
おばあさんはとてもおいしい日本一のきび団子を作り、桃太郎はそれを腰の袋に入れるとさっそく鬼ケ島に向けて旅立ちました。
旅の途中、桃太郎は犬に会い、
「桃太郎さん、袋の中に何が入っているだい。」
「日本一のきび団子だよ。」
「僕に一つくれればお伴します。」
犬は桃太郎から一つ団子をもらい家来になりました。
桃太郎と犬が歩いて行くと、猿がやってきて、
「桃太郎さん、袋の中に何が入っているんだい。」
「日本一のきび団子だよ。」
「僕に一つくれればお伴します。」
猿は桃太郎から一つ団子をもらい家来になりました。
しばらく行くと、キジが飛んできて、
「桃太郎さん、袋の中に何が入っているんだい。」
「日本一のきび団子だよ。」
「僕に一つくれればお伴します。」
キジは桃太郎から一つ団子をもらい家来になりました。
しばらく行くと鬼ケ島が見えてきました。
「あれが鬼ケ島に違いない。」犬が吠えました。
鬼ケ島に着くと、お城の門の前に、大きな鬼が立っており、桃太郎は大きな石をつかむと鬼に向かって投げました。
猿は門に登り鍵を開けました。キジは鬼の目をつつきました。
「こりあ参った。助けてくれ~」
そういうと、鬼はお城の中に逃げていきました。
するとお城から沢山の鬼が出てきて、ついに大きな鬼があらわれました。
「生意気な小僧。俺様が懲らしめてやる。」
大きな鉄棒を振り回しながら言いました。
「あなたがかしらですか。」と言うと桃太郎はすばやく鉄棒の上に飛び乗り、
「悪い鬼、村人に悪いことをしたからには許せない。私のこぶしを受けてみろ。」
「アイタタ、ごめん。ごめん。許してくれ。降参だ。」
「本当に約束するか。」
「約束する。嘘はつきません。宝物をやります。」
桃太郎はお城の金や銀や織物や、荷車一杯の宝物を手に入れました。
こうして、桃太郎はおじいさんとおばあさんの待つ家に帰り、みんなで幸せにくらしました。

https://www.douwa-douyou.jp/contents/html/douwastory/douwastory1_05.shtml

これ、1000字あります。ながっ!
もちろんこの1000字を丸暗記して一字一句間違わずに語るなんて、無理だし、無駄です。

だけど、読み原稿なしで「ももたろう」の話を子供に話すこと、出来ませんか?出来ますよね?
「昔話」はそもそもそうやって囲炉裏端で語られ、口伝されたもの。
記憶しやすいストーリー構造なのです。

だから「ももたろう」のストーリーはなんとなくですが、覚えている。
「ももたろう」の昔話はなんとなく自分の言葉で再現できるでしょう?
細かいディテールとかセリフは適当に処理して。

これが「コンテクスト」です。

曲のコード進行も、書かれているコードを一字一句丸暗記するのではなく、ポイントポイントを押さえる、あとはなんとなく補完する。という形で覚えることが、自由なフレージングにつながるわけです。

ポイントとディテール

ポイントを押さえるといいました。
具体的に、「桃太郎」の、押さえるべきポイントを書き出してみます。

  • 最初:おじいさん・おばあさん。桃、桃太郎

  • 鬼退治へ出発:キビ団子、犬、猿、キジ

  • 鬼退治:鬼ヶ島、船、鬼、戦う、勝つ、財宝

このへんの事物が間違っていたら、アレ?となりますやん。このポイントは「ももたろう」を「ももたろう」たらしめるアイデンティティです。

逆に、この事物さえ押さえておけば、あとは、現代語調、講談師っぽい口調、落語家っぽい口調、昭和のNHKアナウンサー口調、どのようなスタイルでも「ももたろう」は語られ得るわけです。
昔なら清水義範、最近なら星井七億さんがそういうのやってましたね。

すいません、話がそれました。

ただし「大きな流れ」「押さえるべきポイント」だけでなく、「ももたろう」特有の言い回しが存在します。ディテール=細部になりますが。

  • むかーしむかーし、あるところに、おじいさんとおばあさんがおりました」

  • おじいさんは、山へ柴刈りに、おばあさんは川に洗濯に行きました」

  • 「大きな桃がどんぶらこ、どんぶらこと流れてきました」

  • 「♪お腰につけたキビ団子、一つ私にくださいな

割と耳に残るディテールですが、「神は細部に宿る」というやつで、この辺りも押さえておけば、ぐっと「ももたろう」らしくなる。

ただし前述のポイントほど必須なわけでもありません。
(現に、参考として引用した「ももたろう」では「ドンブラコ」は書かれていませんでした)
大まかな流れとポイント、あちこちのディテール、この両者を覚えておけば「ももたろう」を再現できるわけです。

まとめ

(1)で述べたこと、ジャズの話に戻ります。
コード進行を見ながらアドリブをするのは、「ももたろう」の全文を見ながら(多少自分の言葉になおしたりもしながら)話すようなものです。
間違いは起こりにくいかもしれないが、自分の言葉ではない。

一方、ポイントとディテールを押さえた上で、自分の言葉で「ももたろう」を再現する。これが「コンテクストを記憶する」ということです。
譜面のコード記号を見ずにアドリブするのは、これに近い。

圧縮再現して記憶する。
コードの「コンテクスト」を押さえる。
自分の言葉でアドリブをするには、それが大きな助けになるんじゃないかと思います。



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