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メジャーとマイナー

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ジャズ研1年生向けの話です。

結論:

ジャズのスタンダード曲は、長調100%、短調100%ではなく一つの曲の中に長調・短調が混在していると考えましょう。
その方が理解しやすいし、アドリブもフレージングしやすい。
(ただしこれは簡略化した考えであって、音楽理論としてはやや不正確ではあります)

短調まるだしの曲

100%短調の曲。「ド短調」とも言えるベタベタのコード進行です。
ロシア民謡の「トロイカ」という曲をしっていますか?

トロイカ

(例示したコードはAmでしたが、この音源はBマイナー。ご注意ください)

誰が聴いても短調の曲ですね。

Am(エーマイナー=イ短調)で例示しましたが、ですが、Aマイナーを構成するコードはこのように考えてください。

Aマイナーのダイアトニックコード(厳密には違う!)

実はこの表、厳密には間違いです。
が、絶妙に便利なので引用(→ギターマガジン:指板図君のギター・コード講座)させていただきました。 ナチュラルマイナーのダイアトニックコードに、Ⅴm7(Em7)のかわりにハーモニックマイナーの音であるG#音を用いたⅤ7(E7)に差し替えた「いいところどり」のスケール表です。

今回の解説はあくまで入門編。単音楽器でソロとるなら、これくらいの感じでいいです。これを「ダイアトニックコード」として腹に収めてください。

マイナーむずかしいんですよね……。
メジャーとマイナーが陰と陽、コインの表と裏みたいな関係なら理解しやすいんですけど。統一した論理が少なく複雑です。

でも「フロント楽器楽ちんアドリブ術」としましては、まずメジャーとマイナーをコインの裏表のようにとらえ、シンプルに曲を捉えましょう!
といいたい。

トロイカに話を戻します。
Am E7 Dm、すべて 純粋にAマイナーの構成コードから作られた曲です。
わかりやすいですね。これが「ド短調」「マイナー一発」です。

「マイナー一発」の曲では「Aマイナーの音を吹いときゃいい」という話です。「マイナーペンタ一発で弾いときゃいい」とかよく言われるやつですね。演歌もそうです。

ところが、こんな「どマイナー」ジャズではまれで、
ジャズではコード進行はまあまあ複雑です。

枯葉(The Autumn Leaves)のコード進行

みんな大好き、枯葉。
枯葉のコード進行は下記の通りです(iReal Proの画面を示しました)

Fig.2a "The Autumn Leaves"のコード進行

よく演奏される枯葉の調性はGm(Gマイナー)です。

冒頭のコード「 Cm7」はGをルートとすれば、IVm7となります。
すべてのコードをGをルートとし、度数を出し、アナリゼを行う。
これが本来あるべき道です……
が、これをもう「転調」として考えちゃいましょう。

一段目「Cm7→F7→Bb」はBbの2−5−1です。
だからここをBb「メジャー」と考えちゃいましょう。
曲全体の基調はGmなんだけど、この部分は、平行調のBbメジャーに転調していると考えちゃう。

Gマイナーの平行調(relative key)メジャーがBb。これは厳密な理論では転調ではないです(そもそもBbメジャーとGナチュラルマイナーは構成音が同じですから)が、あっさり「転調」と考えて切り替えちゃう方が楽で、フレーズも吹きやすい。

枯葉を、そのように長調と短調にわけると、このようになります。

基本的には平行調のメジャー・マイナーは同じ調の陰と陽みたいなものと考えましょう。
この場合BbメジャーはBbメジャースケール。
Gマイナーは、Gのハーモニックマイナーと簡単に覚えておいてください。

ダイアグラムで頭を整理する

単音楽器のアドリブは、こう考える圧倒的に楽です。
私は頭の中でこういう感じのダイアグラムを常に念頭においています。

Key in Bbのダイヤグラム

この表で一番大事なのは →で描かれた中央の 2-5-1の部分です。
BbメジャーとGmは≒(ニアリーイコール)というか、鏡像関係。
左側に示したメジャーの部分ではBbのドレミファソラシドを吹けばOK。
右側に示したマイナーの部分はメジャーと違うのはGハーモニックマイナーのF#の音を効かせるのがコツです。(厳密には D7とGmの部分ですが)
両脇にある Ebmajor7とCm7はサブドミナントです。

機能和声はあとまわしでいい

曲のアナリゼ(分析)は機能和声論が基本となっています。
曲の中のコードをトニック(T)・サブドミナント(SD)・ドミナント(D)の3つの機能にわけて考える。

ただ、機能和声を理解したからといってアドリブは吹けないんですわ。
手っ取り早くアドリブをするためには機能和声の概念は無視して、コード変化を「転調」とみなして、よく使う部分のフレージングの練習をするのが、手っ取り早いです。実践、実践。

そもそもバップでは、瞬間的に転調とみなし2−5を入れたりが当たり前です。バップは調性の統一性より転調のカラフルさ。静より動です。
バップにおいて軽やかにアドリブをするには曲の中で小刻みに転調を行う(マイクロ転調と私は勝手に言っています)と考えフレージングすべきです。気軽に「転調」。これが大事です。

Any Keyをねっちりと練習するのはそのためです。

Any Keyの練習の時に

Any Keyで曲を練習する時に、このダイアグラムを常に頭に思い浮かべるといいです。すべてのメジャー・マイナーキーの2-5、サブドミナントは自然にでてくるはず。

ためしに、Cメジャー・Aマイナーだと、どうなりますか?

Ken in C=Amのダイアグラム

このダイアグラムを見ながら、たとえば、in Amで枯れ葉を演奏してみましょう。「お?」コード進行がするする出てくるような気がしませんか?

ダイアグラム自体のキーを変えれば、別のキーに対応できます。
このダイアグラムを頭の中で構築してみて、演奏してみるといいでしょう。(最初は紙に書いてみてもいいとは思いますが、できれば頭の中でイメージする癖をつけてください。書いたものを演奏する方法だと、結局書かれたコードにしか対応できなくなるからです)

度数で書いたやつを示してもいいとは思いましたが、度数の場合、メジャーかマイナーどちらかを主としなければいけない。自分でこのダイアグラムにそってコードを頭の中で想起する訓練をしてみてください。

ダイアトニックコードを並べ替えただけ

Key in Bb major/G minor のダイアトニックコードをもう一度示します。
Bbメジャーのダイアトニックコードに加えて、GハーモニックマイナーのダイアトニックコードであるD7を足した、以下のコードをメジャーとマイナーにふりわけて、再配置すると、

Bbのダイアトニック(とGハーモニックマイナーの D7)

……先程の図ができます。

要するにこのダイアグラムはメジャー/マイナーのダイアトニックコードの表を再配置してるだけです。

冒頭で取り上げた「トロイカ」では、この図の右側の「マイナーサイド」のコードしかでてきません。
そのために、ベタベタのどマイナー感を醸し出すわけです。

しかし、ジャズでは一曲の中で左側のコードも使うのが当たり前です。
枯葉がいい例です。

平行調メジャー・マイナーの混在

一つの曲でマイナーと平行調メジャーが混在する曲は、枯葉がそうであるように、基本的にそのキー一発で吹ける、アドリブしやすい曲です。

マイナーの中に平行調メジャーの部分が含まれる曲

  • Autumn Leaves

  • Beautiful Love

  • Summertime

  • Softly, as a Morning Sunrise

  • Sunny

  • Dear Old Stockholm

  • If I Should Lose You

  • Left Alone

反対にメジャーの中に平行調マイナーが含まれる曲

  • Moritat (Mack the Knife)

  • I Could Write a Book

  • There is no greater love

  • Fly me to the moon

ま、この二つはあまり分ける必要がないかもしれません。
曲の基調がメジャーかマイナーかは最後の段の解決のコードによって決まります。例えば、You'd Be So Niceはマイナーとみせかけて最後メジャーなので、メジャーな曲ということになります。
このダイアグラム的な考え方は、メジャーもマイナーもコインの裏表のようにとらえているので、そもそも厳密に区別する必要がありません。






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