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鹿児島県警巡査による情報漏洩事案と問題点・今後の対策について

 鹿児島県警の元公安課巡査(49歳)による県民情報漏洩事件が世間を騒がせていますね。
 この事件の背景と今後も同種事件が発生しうる問題点及び今後の対策について考察してみました。

1 事案の概要


  新聞テレビ・ネットニュースで発信されている内容によれば

鹿児島県警所轄署地域課の巡査長(49歳。以下「被疑者」)が、自らが職務上知り得た個人情報を第三者に漏洩し、地方公務員法第34条第一項(職務上知り得た秘密を漏らしてはならない)違反として逮捕された事案

 です。
  本件が何らかの対価を伴うものであったか否か、第三者の名称(法人或いは個人)は明らかにされていません。

2 上記事件に関する考察

  警察官は職務執行する必要上それぞれの個人に与えられたパスワードを使用して県警本部等が管理する膨大な個人資料データに「職務上」アクセスすることができることになっています。
  具体的にどのような項目なのかについての記述は避けますが、かなり詳細なデータです。

  ※ 報道では犯罪歴も含まれていたとしています。

  「職務上」としたのは、あくまでも職務執行のために利用するということが大前提であり、知り得た情報をそれ以外の目的で外部の第三者に提供あるいは漏洩することは本件の逮捕理由となっている地公法により禁じられています。

  現時点における報道等では被疑者が何の目的で誰に情報を漏洩したか或いは有償・無償の別は明らかにされてはいません。

  以上の事実から今回の事件を考察すると

◆ 49歳にして巡査長という事実
    被疑者が18歳で警察に採用されたとして31年間、20代で採用されたとしても20年以上を巡査(「巡査長」は職名であり階級ではありません。従って警察学校で採用された後一切昇任していないということです)を続けていたことになります。

    警察では職務に精励して一定の成果(警察では実績)をあげると「特別昇任」という特例により昇任試験に合格しなくても一つ上の階級に上がれるシステムがあることから、もし被疑者が組織に貢献しそれなりの成果を上げていたとすれば最低でも「巡査部長」になっているはずです。

    ところが被疑者は49歳にして巡査長であるということに鑑みればこの被疑者は

   △ 20年から31年間さしたる実績もなく、昇任意欲もないまま組織に貢献することなく「のうのうと」日々を過ごしてきた

   △ あるいは過去に何らかの非違行為があり、昇任させてもらえなかった

  ことを示しています。


◆ 被疑者の直属上司の身上監理・監督はどうだったか?

    被疑者の上司は一体どんな身上把握・監督をしていたのでしょうか?
    49歳にして巡査長という組織においてはある意味「お荷物」的存在であれば直属の上司或いは部署の課長は被疑者の日々の行動や素行には十分注意して身上把握・監督が組織上義務付けられていたはずですが、それがなされていなかったということです。

    これは上司による管理・監督が欠落していたと言わざるを得ません。

    早晩現在の直属上司である地域課長或いは所属所副署長更には所属長及び前職(警備部公安課)の当時の上司等に対する何らかの懲戒処分(大抵はせいぜい本部長注意)がなされるはずです。

◆ スマホを用いて個人情報を第三者に転送した事実

    今のスマホにはもれなく付属している「カメラ撮影機能」を用いて個人の犯歴その他情報を第三者に転送したとの報道ですが、画面上現れるデータをスマホに撮影する現場を誰も見ていなかったという通常では信じられない事実が発覚しています。
    捜査情報にアクセスできるパソコン周辺には監視カメラなどが配置され24時間「誰が何時にアクセスしたか」くらいの内部チェック機能がなされることくらいは誰が考えても当たり前のことなのに、今回の事案ではどうもそうではなかったようです。

    警察が保有する捜査情報及び個人情報の漏洩は組織の信頼を揺るがす重大な犯罪であるにも関わらず、今次の鹿児島事案のみならず複数の県警本部において枚挙にいとまがないくらい発生しています。

    この現実を警察庁がどのように認識し、そして今後の未然防止対策を打っていくのかが注目されます。


3 未然防止のための具体策

(1) スマホを職場に持ち込ませない
     カメラ機能のついたスマホは便利であると同時に情報漏洩には不可欠な機器であることから、警察官が職務執行中は責任ある上司がそれぞれの所属において

    鍵のかかる保管庫で保管・管理する

などの徹底した厳重な措置が必要かと。
    外部からの電話対応或いは職務執行上は固定電話で十分です。  

     いい大人でしかも警察官にそこまでやるかという意見もありましょうが、情報漏洩はそれくらい重大な犯罪行為であることを認識していない警察官が多数存在することが問題なのです。
     また、警察官のレベルとはそれくらいなのかもしれません。

     性善説では解決できない問題もあるのではないでしょうか?

英国の対外情報機関であるMI6(エムアイ・シックス)

 では、外部入庁者はもちろん部内の勤務員も受付時に携帯電話等を鍵のかかる保管庫に一旦預かるシステムを何十年も続けています。

     膨大な個人情報を保有している警察組織であればそれくらいしてある意味当然ではないでしょうか?今更ですが。

     警察庁には一時しのぎの対策ではなく、上記のMI6の具体例を参考に抜本的かつドラスティックな対策を可及的速やかにとるよう切に要望します。

(2) 上司による管理監督の徹底

     はっきり言って警察内部における身上把握・監督が甘すぎると思います。
     今次被疑者の如き「問題児」に対しては日常業務に優先して身上把握に関する情報活動を日夜すべきです。

(3) 操作端末へのアクセス権のコントロール

  現在のシステムでは、捜査員等が個別にいつでも端末にアクセスできるという利便性優先の制度であることから今回或いは枚挙にいとまがないくらいの同種事案が発生してきました。そこで、以下の方策が有効かと考えます。

  ◆ 端末にアクセスできる警察官等を一定階級以上の者又は所属課の課長或いは課長補佐、係長(最低でも3名程度)に限定し、捜査上必要がある場合は、当該アクセス権を有する警察官等の立会のもとに端末を操作させることとする。(或いは、アクセス権を指定された警察官等のみしか端末を操作させないこととする)

  ◆ 捜査情報を検索する端末を各警察本部或いは所轄署の次長或いは副署長の真横あたりに配置し、同時に監視カメラにて端末操作する者の映像を撮影・記録する

 利便性優先がこの種事案を招いていることは明らかであり、この利便性と逆行させる対策を取ることにより不埒な目的で端末使用を試みる不良警察官等の犯行意欲を減退させるのです。

 人はみな「他人から見られていると悪いことをしにくい」ものです。
 街中に溢れる防犯カメラはその最たる例であり、設置当時は左翼系の人々が「肖像権の侵害だ」と大騒ぎしましたが、監視カメラの防犯効果は現在では万人が認めるところとなっていることがその証左です。

 警察内部でもこの「世間の常識」を適用し、利便性よりも組織の保護及び信頼の確保を優先するドラスティックな制度を導入し身内に甘い体質に「喝」を入れるくらいでなければいけません。

 この種事案は一旦発生すれば警察の信頼を根底から覆し、将来に亘って円滑な警察活動そのものを阻害する重大な犯罪であるとの認識と、警察が保有・アクセス権を有する捜査情報、個人情報は公のものであり個人的に使用するものではないという原理原則を幹部職員が日々部下職員に擦りこみ、もう二度とこのような事案を目にすることがないようにお願いする次第です。

 ここまでお読みいただき、ありがとうございました。





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