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専門家目線になる漢方薬の使い分け⑧ 子どもの風邪・発熱に

春になり、日差しは暖かく感じられるようになりましたが、朝夕と冷え込み、体調を崩しやすい時期でもあります。

春休み、お子様が急に体調を崩すこともありますよね。

お子様の風邪に最もよく使われるのは「麻黄湯」です。

今回は麻黄湯について少し詳しくご紹介いたします。


麻黄湯



麻黄湯は、数ある風邪薬の中でも最も『実証』タイプに使われる漢方薬です。

以前、陰陽の分類について説明ましたが、大人と子どもでは子どもの方が『陽』に分類されますよね。

ここでいう実証とは、体力の有無だけではなく、病邪と戦う力が強いかどうか、体が反応できるかどうか(エネルギーとしての陽が十分にあるかどうか) も関係しています。

子どもは大人に比べて、もともと体温も高いですし、熱に対して耐性があります。

大人は、38度を超えるとしんどくて動けないという方もいらっしゃいますが、子どもは高熱を出しても意外と平気でけろっとしています。

この、病邪に対する戦う力が十分に残っていて、汗を出したり熱を出したりする体力が十分にある時に使えるのが『麻黄湯』です。

反対にいうと、普段から体力がなく、風邪もひきやすく、胃腸も弱い、高齢である などの方が熱があるからといって麻黄湯を飲んでしまうと、からだに負担がかかり過ぎてしまうことがあります。


麻黄湯の構成生薬


麻黄湯は、漢方薬の中でもすごくシンプルな構成をしています。

●麻黄:汗を出して解熱を促し、咳を止める働きがあります
●桂皮:体を温めてめぐらせる働きがあります
●杏仁:咳を止める働きがあります
●甘草:気を補い、全体を整え、急迫的な症状をやわらげます

麻黄湯の特徴は、麻黄と杏仁の組み合わせです。

麻黄には、エフェドリンという、交感神経を刺激して気管支を拡張させたり、血管を収縮して粘膜の炎症を取り去る働きのある成分が含まれていますが、麻黄と杏仁の組み合わせで『咳を鎮める』というはたらきがより強くなります。

特に小さなお子様の鼻が詰まってしまうと、味がしないので、水分や食事を取りたがらないという傾向が見られます。

麻黄湯には、鼻のつまりを解消させて呼吸を楽にするはたらきもあり、
鼻がつまって、食事が進まなかったり、夜にゆっくりと眠れなくなったりするのを解消してくれるはたらきも期待できます。

麻黄湯に類似した漢方薬

麻黄湯とよく似た構成の漢方薬に、『麻杏甘石湯』 があります。

『咳を止める』時に使われる漢方薬なのですが、一時ドラックストアなどでも品薄になっていた漢方薬です。

これは、生薬の頭文字から名付けられており、
麻黄・杏仁・甘草・石膏 からなる漢方薬で、咳止め効果の高い漢方薬です。

麻黄湯の構成生薬、『桂皮』が『石膏』に変わっただけです。

大きな違いとして、桂皮には体を温める働きがあり、石膏には冷やす働きがあります。

なので、

麻黄湯:悪寒発熱が強く、咳や関節痛を訴えるかぜ初期 (体を温めて熱を出し、汗をかかせたい)

麻杏甘石湯:顔を赤らめて咳き込むような、強い咳・喉に熱感がある時に(咳を鎮めて、炎症を抑えたい)

と使い分けができます。

子どもが風邪をひいたときに注意したいこと


子どもの風邪を早く治すポイントは、熱さまし(解熱剤)を最初から使い過ぎないこと。

体は病原菌を殺すために熱を出しているので、それを薬で無理に下げることかえって症状を長引かせてしまう原因になります。

水分をこまめにとり、高熱で苦しそうにしている場合には、大きな血管が走っている脇の下や首、鼠蹊部を冷やすことで、体温が自然に下がるようにしてあげると良いでしょう。

*高熱が出て、ぐったりしているような時にはなるべく早く病院を受診しましょう。

また風邪をひくと、鼻がつまってしまい、口呼吸になってしまうことが多いので口が乾燥しやすくなります。

口の乾燥を防ぎ、脱水防止のために室温程度の水分をこまめに飲ませましょう。(発熱や下痢などがひどくなければ、水で十分です)

麻黄湯を飲んで、しっとりと汗をかいたら、着替えさせ、薬は中止して下さい。

(汗をかきすぎると脱水症状が起こりやすくなります。)

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