この手紙を開いてくださったあなた へ

この手紙を開いてくださったあなた へ

 ご無沙汰しております。はのとです。冬の寒さもいよいよ厳しくなってきましたね。お正月、いかがお過ごしでしたでしょうか。

 私事ですが、年末年始は家族と自宅でゆっくりと過ごしました。もう21歳ですから、こうやって当たり前のように家族と過ごしている時間もいずれなくなっていくのだろうと思うと、大事にしなければいけないなと常々思います。

 最後にあなたにお手紙を書いたのは、昨年の三月でしたね。なかなかご連絡できなくてごめんなさい。思い返せば、毎日誰かにお手紙を書いて、飽きずにそれを続けていたのがもう一年前。時の流れは早いものですね。最近はめっきり書かなくなってしまいましたが、年も明けたということで、久しぶりに筆を握りました。

 元は、何か新しいことを始めたいという思いと共に始めたこの習慣。昨年度の春休みは、毎日勉強をして、ここで手紙を書いて、趣味を楽しんで、という日々を送っていました。毎日朝早く起きて、夜も早く寝る。生活習慣を是正したおかげで、毎日元気いっぱいだったのをよく覚えています。


 あなたにとって、2021年はどのような一年だったでしょうか。困難も多い年でしたが、2020年の暗闇よりは、思い出を作ることが叶いましたでしょうか。少しでも楽しかったと思えることがあればと思います。

 私ですが、2021年はようやく光の見えてきた一年間でした。一番大きな変化は、やはり大学の対面授業が再開されたことだと思います。2020年は一度も通うことが叶わなかった大学ですが、今年は週に三から四日は通うことができました。それでも全授業対面ということではありませんでしたが、私にとっては大きな変化です。

 とは言え、いざ始まってしまうと強欲なもので、オンライン授業だった一昨年度が懐かしく感じられるのです。ご存知の通り、私は大学まで片道二時間かかる辺境の地に住んでいますから、一限がある日の五時台に起きるという生活が、徐々に苦しくなってきたのです。当然と言えば当然ですね。

 それでも毎日大学に通い、人と会い、人と会話をする。たったそれだけのことがどれだけ生きる上で重要なことなのか、それを深く実感することができました。人は一人では生きていけないと、月並みのことですが、そう感じるのです。ポエマーみたいになっちゃいました。ごめんなさい。

 それから、それと並行して大きな変化は、所属している軽音楽部の活動再開です。でも、再開からのスタートではありませんでした。再開させるための動きから始めなくてはならなかったのです。

 感染対策の具体的なガイドラインを策定したり、規定の人数内、決められた場所だけでの活動内容を考えたり、限られた練習時間の中でライブを行う方法を考えたりと、未だかつて誰も直面したことのない困難に立ち向かわなくてはなりませんでした。

 始めこそ、手探りの状態でした。提示された条件の下で苦しみながらもなんとか活動を行い、でもそこにも限界を感じ、同期ともめながらも、大学側に直接話し合いの機会を設けてもらい、最大限の可能な形を模索したことはもう懐かしく感じられます。自分の一歩が大学全体を動かしたあの瞬間、自分の中で大きな責任感が芽生えたのを感じました。

 それによって活動の幅が広がり、それに伴って感染対策もより徹底して、それを部員を共有し、みんなで実績を作っていきました。定期的な練習やライブの開催、そしてその中での感染者ゼロ。私たちの部活だけが、唯一それを達成することができました。みんなの協力のおかげですが、とても嬉しい実績です。

 その部活動の再開に伴い、出会いと別れもありました。三つ目の大きな変化です。まずは、二年付き合っていた恋人との別れです。一つ上で就職活動に行き詰っていた彼は、それ以外のたくさんの負の感情にも支配され、私との別れを決めたそうです。そんな彼とはその後もひと悶着どころか四悶着くらいありましたが、とりあえず私に未練はありません。とは言え、人生でほとんど初めてのような恋、そして別れは、私に大きな傷を残しましたが、その一方で、私を大きく成長させてくれました。

 そして出会いですが、この状況だからこそ、上級生との関りが増え、今まで目もほとんど合ったことのなかった先輩と話す機会が増えました。六月ごろに副部長になったことをきっかけにその機会はさらに増え、部活の運営についての話、そして自分たちにできることは何か、など、色々な話をさせていただきました。

 こんな状況でなければきっと、ここまでその先輩との距離を縮めることはできなかったと思いますし。縮める必要もなかったと思います。副部長としての私にとって最も苦しい時期を支えてくれたのが、その先輩でした。彼がいなければ、私はとっくに限界を迎えて爆発していたと思います。

 出会いと言えばもう一つ、昨年度は大学が閉鎖されていたせいで部活動を行うことができず、その影響で新入生も入ってこないという状況でした。ですが今年度、必死に勧誘活動を行った結果、多くの一年生、そして二年生が入部を決めてくれました。誰一人としてまだ退部者が出ていないのは、奇跡といっても過言ではないことです。

 彼ら新しい風は、私たちの部活に良い影響をもたらしてくれました。みんな、素直でいい子たちです。私のようなすっとこどっこいな先輩も慕ってくれますし、そんな可愛い後輩たちのためにと思えたから、私は辛い幹部としての仕事も耐えられたのです。これからも、私の糧はそこにあります。

 そんな出会いと別れがあった部活動も、また新たな出会いと別れの季節となってしましました。四年生はこの春卒業してしまいます。せっかく仲良くなれたのに、せっかく距離が縮まったのに、ここでお別れです。寂しいですね。でも、それを乗り越えて、人はまた一つ先へ進んでいくのだと思います。


 なんだか長くなってしまいましたが、私にとっては、もちろんよいことばかりではありませんでしたが、素敵な一年になりました。今度は、あなたの話を聞かせてくださいね。どんなものを見て、どんなものを知って、どんなことを感じたのか。あなたのお話は、私にとって刺激的ですから。顔も名前も年齢も分からなくても、いえ、分からないからこそ、面白い話があるのです。


 さて、寒さもだいぶ厳しくなってきました。今日なんか特に気温が上がりにくいそうですね。お身体に気を付けて、素敵な日々をお過ごしください。頑張り過ぎず。それをモットーに、今年もなんとか乗り切っていきましょう。

 それでは、また。


2022年1月6日 はのと

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?