見出し画像

年越し"COUNTDOWN Q"

年越しの瞬間を「COUNTDOWN Q」という今年初開催のイベントで過ごした。このフェスは同じく2019年に初開催となったインドア・フェス「Q(キュー)」の主催者が開催するもので、更に元を辿れば福岡の有名お洒落フェス「CIRCLE」の系統ということになる。出演者としては、グッドラックヘイワにtoe、そしてceroとうまく言えないが「こっち」の音楽が好きな人間には涎が出るほどたまらないラインナップであることは間違いない。僕もその一人。最高の大晦日を過ごすため、恵比寿へと向かった。

画像1

最初のバンドooiooが終わる頃合いに会場へと着いたが、何となく不安になる。フェスと呼ぶには人が少な過ぎる。クロークに荷物を預けるも、番号札は20番台。ホワイエ飲食ブースではそれなりの人がわいわいと盛り上がっていたが、ホール内に入るとガランとしている。恐らく30人程度しかいない。そもそもこのフェス開催が発表されたのは12月頭だったし、twitterでもこのフェスに行くという宣言をしている人間をまったく見かけなかったので、やっぱり開催を急ぎ過ぎたのかもなあとぼんやりと思う。この時期になると既にフェスで大晦日を過ごしたい人間は幕張であったり、ほかの会場のイベントに流れてしまっているのかもしれない。

会場後方でちびちびとビールを飲んでいると、グッドラックヘイワが始まった。セッティングを終えると、開始時間より5分くらい巻いていたが「もういいよね?」と2人が確認し、そのまま演奏へ。グッドラックは、確か本当にだいぶ前に、それこそ僕が高校生くらいの頃に新宿ロフトでGood Dog Happy Menとの対バンで聴いたきりだったが、あの頃から伊藤大地は随分と出世したよなあとしみじみする。ドラムとピアノのシンプルなツーピース。それなのに、ここまで観客を釘付けにできるのは2人の息の揃ったグルーヴがあってこそかと思う。手数の多い華麗なドラミングと、どこか親しみの持てる柔らかなピアノのメロディーライン。この化学反応がこの日も会場を温かく満たしていた。

お目当てのtoeの頃になると、会場は当初心配していたほどではなく、それなりに客が入りだした。toeのライブは今まで何回も観たことがあったが、この日のtoeは一味違った。鍵盤のサポートを加えたことで音の厚みが増したこともあるけれども、とにかく演奏が熱い。掻き鳴らす轟音のギター、戦闘機のように乱打し暴れるドラム。僕がぼんやり思ったことは「これは男の子が大好きなバンドだ」ということ。ここまでエモくて、最高にかっこいい演奏を目の当たりにさせられれば、誰もが血が滾るのを感じざるを得ない。ステージ上でこれでもかと演奏をする彼らを見て、胸焼け……と言うと表現は悪いが、良い意味で大晦日に観るようなバンドではないよなあと終始ニヤニヤとしていた。もちろん、僕は胸焼けするような熱い演奏が大好きなので、最後までたっぷりと堪能し、幸せな気持ちのまま大満足で過ごした。

間を挟みOL Killer。toeの演奏中から、DJブースの周りには女性を中心に、場所取り合戦が繰り広げられていた。みんなのお目当てはやっぱりDJトイプードル。僕も岡村ちゃん(言っていいのか?)を生で見るのは初めてだったが、本人を目の前にすると何だか笑ってしまう。本当に岡村ちゃんがそこにいる。これが2回ムショに入った男か……という無粋なことを考えつつも、滲み出るそのスターオーラ。ステージは暗く、サングラスをしているので顔をしっかりとうかがうことはできなくても、挙動の端々から岡村ちゃんたる証拠がしっかりと滲み出ていた。DJは正統派の良く練られたセットで、こっちのジャンルはあまり詳しくないので何とも言えないけれど、リズム!ビート!ビート!という感じ。最後にはPerfumeのBaby cruising Loveを流し、きっちりとサービス。OLを踊らすことができるのかはわからずとも、会場は大いに盛り上がっていた。

大本命のceroは8人編成の贅沢なセット。高城君がバンドメンバーを紹介し、今年はみんな飛躍の年であったと言うように、ceroのサポートからどんどんと各方面へと活躍していくのが面白い。サポートすら巻き込んで、ceroという共同体として成長していくのが彼らの特別なところ。相変わらずの安定感のある演奏に、何も心配することなく心置きなく踊ることができた。彼らの音楽は時として複雑でありながらも、人間の奥底に自然と沁み込んでいくような優しさを同時に兼ね備えている。POLY LIFE MULTI SOULというアルバムは、それを追求したアルバムだったように思う。一聴すると取っ付きにくいが、その実彼らが鳴らしている音楽は我々にとって、親しみやすい音楽そのものに違いないのである。だからこそ、自然と身体が動く。

この日はセットリストも、新旧交えた内容で大満足であった。「船上パーティ」というコミカルな名曲から、大晦日にぴったりの「街の報せ」(本当にこの時期に聴くと沁みる)。トリを飾るのは「さん!」。2019年という年にお別れを告げるように、会場を幸せな空気で満たし演奏を終えた。

年越しは砂原氏のDJセットでカウントダウンをし、そのまま新年へ。全体としては非常に満足したイベントであった。良くも悪くも、過剰な集客にならなかったことで、会場は余裕を持って音楽を聴けたし、客層も出演者のおかげか年齢層高めの落ち着いたイベントとなった。まるで仲間内のほっこりとしたイベントにお邪魔させていただいたような気持ち。O-EASTとかそれくらいの規模のライブハウスで開催すれば、また違ったイベントになったんだろうなあとしみじみ思いながら、帰路へと着いた。来年以降も開催されるのかはわからないけれども、ここにキセルとかbonobosとかが入ってくればさらに完璧になるなあと思ったりした。コンセプトは良いフェスなだけに、これからも続いて行くことを願う。

とにもかくにも、今年もどうぞよろしくお願いいたします。