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プラセボ探偵 光永理香 12


12 冤罪事件

全く身に覚えの無い罪で裁判されたり
自分は否定しているにも関わらず過酷な取調べを
うけたり・・・
民衆の思い込みによって犯人に決めつけられたり
なかには死刑執行後に新たな証拠が発見され
裁判がやり直しになったり

冤罪は人間の人生、もっと言えば存在そのものを破滅させる破壊力を持っている。

そんな事を考えさせる事件を最近知った。

「伍億円事件別件逮捕事件」

日本人なら誰でも知っている、「伍億円事件」
東京郊外の路上で銀行の現金輸送車を白バイ警官を装って輸送車を奪い現場から逃走、そのまま伍億円と共に消え去った。
警視庁及び日本の全ての警察が維新をかけて
捜査したが一年たっても犯人逮捕はおろか容疑者を絞り込む事も出来なかった。
警察は世間から非難を浴びるなか、名刑事と呼ばれる神奈川県警「黒山 麒一郎」も投入されたが大きな進展は得られなかった。

私がこの事件を知ったのは、この事件の別件逮捕で冤罪になり人生も家族も破滅させられた男性が40年経った2008年、最近◯殺したと小さな記事を見たからだ。

 そして遂に捜査線上にある人物が炙り出された。
「光永 圭一」と名乗る年齢不詳の男性。
名前は自称、生年月日、本籍など本人と認める身分証明は所持していなかった。
理由は銀行に送られていた脅迫状の書き方の特徴を調査していた別チームから上がった犯人像に合致していたらしい。根拠は明らかにされていない。
その他状況証拠はてんこ盛りにあった、アリバイはまだ白とも黒ともハッキリ否定も肯定もされていなかった。現金輸送車の乗員にモンタージュを見せても人それぞれの反応で決めてにはならなかった。また科捜研の筆跡鑑定では、別人と判断していた。よって「光永圭一」がこの件の容疑者である事は秘密裏に捜査が進められた。

 40年前の事件である筈なのに、重要参考人として
私の父と同姓同名の人物が出て来たときは目を疑った。たまたま同じ名前の人間が居ただけの話しならなんの問題もない。

だが違った。
「光永圭一」から私に電話が掛かってきた。
「理香、俺だ。お父さんさんだよ」
「お父さんは今大変な事に巻き込まれていて困っているんだ、理香助けてくれ」と言う。

 父は10年前に失踪していた。
私と母を置き去りにして何の説明も無く突然居なくなった。あれから10年、私達母子がどれだけ苦労して過ごして来たか。
 何の弁解も無く「助けてくれ」だと。

 しかも父の巻き込まれている「大変な事」とは40年前の「伍億円事件」の容疑者にされそうだと言うのだ。10年前まで一緒に生活していた父親がなぜ昭和の大事件に巻き込まれているのか?

まったく共感出来ない。これは父親の茶番だ。
電話の受話器を握りしめながら現状を否定した。
いつのまにか通話は切れていた。
「なんて勝手な男なんだ。誰が助けるものか」
私は現状を大切にして母親との二人の生活を守ろうと考えた。

 ところが状況は一変した。
私達、母娘が冤罪が原因で自殺した「光永圭一」の家族だと騒がれ出す。
 取材の記者や野次馬まで家の前に集まっていた。

 現実が書き変わっている。
私達が知っている過去とこれから起きるだろう未来が噛み合っていない。

 静かに母親と暮らしていくはずだった未来が狂わされている。
迷惑な父親を助けるつもりはないが結果的にこの「タイムパラドックス」を解消しなければならない。

 40年前に解決できず迷宮入りした事件を現代の技術を使って改めて捜査し直す。
 言うのは簡単だが、ただのウェイトレスの私に出来るはずが無い。

 しかし私がやらなければ・・・
「また職場に「有給休暇」を申請しなければならないな」と考えていた。

つづく(12/53毎週日曜日20:00更新)

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また締切を守れませんでした、ゴメンなさい
まあ、待っている方は居ないと思いますが
今回のお話は大変そうです
ガンバリます(笑)

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