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プラセボ探偵 光永理香 9

9 アメリカ同時多発テロ事件

 昨日は全く眠れなかった。
何故なら今日ニューヨークで起きるテロ事件を知っているからだ。

いよいよ午前9時46分になろうとしている。
しばらくしてテレビに「ニューヨークのワールドトレードセンターに航空機が衝突」とテロップが流れた。
私は「やはり今日の事だったのか」とショックを受けた。と同時に父親の話しが現実に起きた事に頭が割れそうだった。

 やがてテレビも衛星放送を介して現場の様子を中継し出した。黒煙を吐き出すワールドトレードセンター北棟を映し出すテレビ、偶然南棟に突っ込む様子を写すビデオ映像も流された。

ペンタゴン(アメリカ国防総省本庁舎)に激突したハイジャックされた航空機、乗客に反撃されて目的を果たせ無かった航空機。

 このテロ行為は全て乗客も乗務員も犠牲になっている。もちろん巻き込まれて犠牲になったビルで働いていた人々。
職務を遂行し殉職した消防士や警察官。
その後勃発するアフガニスタン紛争を含めると兵士の他に民間人にも多大な犠牲者を出す事になる。

私はこの事について何もする事が出来なかった。
そりゃそうだ。
日本の片隅にいる母子家庭を支えるのが精一杯の一人のウェイトレスが何か出来るレベルの話しでは無い。
しかし父は私にこの話しをした。
それには何か意味がある気がする。

しかし事件はもう既に起きている。
私は日本でテレビを見ているだけで何も出来ない。
この事件をどうにかするのではなく、今後起きる事を予測しなければならない。

私の得意な「思い込み」だ。

私は日本人だ。
このテロの日本人犠牲者が何人いてどうなるのか少し知っている。
「そうだ」
「アメリカで起きたテロでも、その家族は日本に居る日本人だ」
その家族の為に何か出来るはずだ。
でもいきなり「貴方の家族はテロで犠牲になった」
「だから私がチカラになります」って言っても誰も信じないし、何かの詐欺だと思われるだけだ。

どうするべきか迷っているうちに数日が経った。
日本人の犠牲者の名前が報道され始めた。

その中に私の心臓を鷲掴みにする様な名前があった。

行方不明「ミツナガケイイチ」

乗客乗務員の抵抗に遭い、唯一目的を果たせず墜落
したユナイテッド航空93便の搭乗記録に日本人の名前が二人いた。残念ながら高速で地上に衝突した機体は原形を留めていなかった。生存者はいなかった。父親と同姓同名だが同一人物とは限らない。
私には確かめようが無い話しだ。
機体は人間を閉じ込めたまま無惨な姿になってしまった。人体も原形どころかジェット燃料の火災でほとんどが蒸発していたらしい。

果たしてこのハイジャック機に乗っていた日本人は父なのか、父は他の乗客とチカラを合わせてテロを防いだのか、それとも直前で搭乗するのをやめたのか・・・ 「考えてもしょうがない」

父は死んでしまったのか、どこかで悠々と生きているのか?それとも・・・
父には父の使命みたいな物があるのだろうか?
私達家族はもう邪魔になったから捨てられたのだろうか?

「ああああっ考えるな、どうしょうもない事だ」
ここ数日あまり寝ていない、そろそろ仕事にも支障が出てしまう。母親は何も知らずに何も考えずに眠っている。私はどうしよう・・・「そうだ!今夜は寝る前にじっくり筋トレをしてお風呂に入ろう そして早めに寝床に入ろう 他人の事より自分を大切にしよう」

「父のしてくれた話しは多分、私を救う為のヒントなんだ」もっとヒントを大事にしよう・・・

つづく(9/52毎週日曜日20:00更新)

今回は遅くなって失礼しました
理香と一緒に私も悩んでおります(笑)

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