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運命の絵との出会い

私は今でこそ、そこそこ展覧会通いをするようになったものの、学生時代は絵画には全く興味がなく、遠足などで見た絵の記憶も全くありません。

そんな私と絵画を出会わせてくれたのは、2019年秋に行われた「コートールド美術館展 魅惑の印象派」の展覧会案内のポスターでした。上野駅周辺には、その時々に美術館、博物館で開催中・予定の展覧会のポスターが大量に貼られており、私は彼女と出会いました。

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『フォリー・ベルジェールのバー』、エドゥアール・マネの1882年の作品です。

構図の不思議さ、巧みさ、大胆さで有名な本作ですが、黒のドレスの美しさ、ガラスやオレンジの瑞々しい表現も素晴らしかったです。

でも私にとってはそれだけでなく、街を歩きながらポスターの中の彼女を見た瞬間に吸い込まれて「無音」を感じました。周りは賑やかでざわざわとしているのに、自分の心だけ静かというか、意識がふっと自分の内面にズレて、「あれ、私、何やってるんだろう」と思う時、飲み会の時や働いている最中にふと訪れる時間。「彼女はそんな時の私だ」と強く思いました。

彼女は顔はこちらに向けているのに、空虚というか、目が合っている気がしません。
この、絵画の一部分を切り取ったポスターだけでこれだけ惹きつけられたのだから、ぜひ本物を見に行かなければ。その一心で大人になってから初めて美術館を訪れました。

その後、印象派の作品について色々調べるなかで、色遣いが好きな絵、美しい風景に没入してしまう絵、空間の独特さに惹かれる絵など、たくさんの好きな絵ができました。
(コートールド美術館の審美眼がわたしとマッチしていたのか、マネとドガとセザンヌで一番好きと思う作品を所蔵していたのはラッキーでした)
いつか生で見たいと思う絵もでき、あんなに絵画に興味がなかったのが不思議なくらいです。

でもあんなふうに強い引力を感じた作品は初めてで、こうやって「作品に自分をつかまれる」のは、人生のなかで1回か2回、もしかしたらなかったかもしれない貴重な体験だったと思っています。

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(余談)芸術作品について語りたい

過去の優れた作品(絵や文学)について語られる時、その作品が世に出た当時の背景や受け止められ方であったり、作家の分析であったり、描かれているものや技法(テクニック)の解説が多いと思います。
もちろん世に出る研究は、ある程度客観的で、検証されているべきであり、それは鑑賞・読書の際にとても有益だと思いますが、現在の自分の感覚からは遠くなってしまう気がしています。

私が気になるのは過去の作品をみて、現代の人がどういう印象をもつのか、どんなところに惹かれるのか、っていうところなんですよね。
他の人がどこを好き!と思ったのか、どんなふうに作品と対話してつながったのか、その関係性を知りたいです。
とても個人的なこと、主観的なことだと思うんですが、それによって現代社会が炙り出される部分もあるんじゃないかな、と。大学の学問だとたぶん「表象文化論」に当たるようですね。

今だとTwitterで感想を調べる、くらいしかできないんですが、読書会とか、鑑賞会にも参加してみたいものです。


(ヘッダーにしている絵画は、コートールド美術館公式サイトより引用。https://courtauld.ac.uk/highlights/a-bar-at-the-folies-bergere/

縮尺の関係上、下半分が見切れているので、ご存知ない方はぜひ上記URLから全体をご覧になってください)

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