花粉症と鼻炎の話

  酷い花粉症持ちである。記憶を辿れば、既に小学校の半ば頃から、それは悩み事の一部だ。
 当時〝花粉症〟という言葉は、今ほど世間に浸透しておらず、私は毎回何時間も待たされる耳鼻咽喉科に於いて、〝アレルギー性鼻炎〟と診断されていた。実際そうだったのかも知れないが、通院時期が大体春先から夏頃にかかっていた気がするので、そう言いながら花粉症だったのかも知れないと思っている。
 そもそも、〝花粉症〟と〝アレルギー性鼻炎〟のハッキリした違いが、私には判らない。いずれも、酷いくしゃみ・鼻水に悩まされるという点では同じである。いや、もしかしたら〝花粉症〟の方が厄介かも知れない。くしゃみ・鼻水に加え、頭がボーっとし、倦怠感が伴う。目も物凄く痒い。酷ければ呼吸困難を引き起こしそうな異常な咳込みに苦しめられることもある。鼻が詰まることで口が開けっ放しになり、喉を痛める為、睡眠中もマスクが手放せない。
(あ、鼻詰まりは〝アレルギー性鼻炎〟でも起こるので、マスクが必要なのは同じかも…)
 花粉症といっても花粉には種類があり、人に因って反応する植物は様々である。私は基本的にヒノキやイネ科の植物に反応する人であったが、数年前に酷いスギ花粉が飛んで以来、スギにも反応するようになってしまった。
 花粉は春と秋に飛ぶが、比較的楽な秋に対し、春がとにかく悲惨である。暖かくなって外に出やすくなり、日差しの明るさや花々の美しさに心惹かれる季節だというのに、私は窓を閉め切って、室内から出られない。
 一応薬を飲み、最初はそれなりに効果が表れているようにも感じるのだが、効いているのかいないのか判らなくなるのは時間の問題だ。
 汚い話だが私は、自分の鼻が、花粉の種類によって違う反応を示すことに最近になって気付いた。それとは鼻水の状態が、スギの時は水洟垂れ流しなのに対し、ヒノキになると鼻の中で固まり、詰まるのである。
「あ~、最近洟固まって来たわ。スギ終わって、そろそろヒノキなんかな~」
 などと話していたら、ニュースで、スギ花粉が終わり、ヒノキが飛び始めていると言っていたとかで、「あんたの鼻はスゴイ!」と、母に褒められた。(喜んで良いのかどうか…)
 垂れ流しも辛いが、詰まるのは尚辛い。外に放出できれば一瞬でもスッキリするが、睡眠中となるとそうはいかない。詰まって呼吸が出来ず、おちおち眠ってもいられないのが現実だ。因みに、両の鼻が同時に詰まることがないわけではないが、大体は片方が詰まる。
 横向きに寝ると、身体が下になった方の鼻が詰まる。苦しくなると寝返りし、反対を下にする。すると鼻詰まりは反対の鼻に移動するのだ。まるで人間砂時計である。
 睡眠中に有効ではないが、鼻詰まりを解消する方法というのをテレビでやっていたので、食い入るように見てみた。ペットボトルを脇の下に強く挟む…とかそういった方法であったが、やってみても効果は一瞬で、全く持続性が無いので、さっさと匙を投げたのであるが…。
 そんな時、意外なことが原因で、〝鼻が通る〟という経験をしたので、ここでご紹介しよう。嘘のような本当話である。
 驚くなかれ、びっくりしたら鼻詰まりが治る!のである。
 ある時、何かの拍子に飛び上がるほどびっくりした鼻詰まりの私は、飛び上がるほどびっくりした拍子に、鼻詰まり中の自分の鼻が通ったことに、本当にびっくりした。
 しかしこちらも効果は一瞬だけ。四六時中誰かに飛び上がるほどびっくりさせてもらうのは難しく、また、そんなにびっくりさせられていては、飽きてびっくりしなくなる。万が一、常に新鮮な気持ちで毎回びっくり出来たとしても、きっと心臓の方が持たないだろう。
 なかなか有効な手立てのない鼻詰まり対策…花粉症の春は、まだまだ続く。
 因みに花粉症になるのは、神経質な人だという噂を聞いたことがある。信憑性に確証はないが、我が家では一番酷い私を始め、母、弟妹とも花粉症である。愛犬を見れば、人間に負けず劣らず神経質であるが、体質などが類似しているか定かではない為、あまり参考になるとは言えない。時に、くしゃみ・鼻水に襲われていることもあるので、軽度ということにしておこう。
 唯一、父に限っては、春夏秋冬、アレルギー症状と無縁で過ごしている。さもすれば、噂も強ち嘘ではないのかも知れないと、心密かに思ったりしている。

 

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