7月11日 ②

 友人おすすめの店で食事する。思っていることを黙っていられない性格なので、こんな機会さえなければ仕事が決まるまで会うつもりがなかったことまで話したが、彼女の方も連絡し辛い雰囲気を察していたようだった。
 会わない間の一年間、私の身の回りではあまりにも不本意なことが続いたため、その話を捲し立てるのに終始。優しい友人はひたすら聞き役に徹してくれた。
 面接経験が一度も無く、実習先にそのまま就職した後、結婚と子育てを経て、再び乞われて元の職場に戻った彼女は、私のような苦労をしたことが無い。とはいえ、彼女なりに仕事に対し、色々と思うことはある様子。職場で必要とされている気がしない…という、意外な心境を吐露したことに、私が一番驚いた。傍から見ていれば、必要とされているから戻ったのだろうし、実際に活躍出来ているから今もそこで働けているのだと感じている。それは事実だという自信が、私の中には明らかにあった。
「今、6年目やけど、続けても10年かな…。」
 気弱な発言だった。
 10年を越したところで、彼女が職場から離れることはないと思っている。彼女のそういう性格が、私にとって羨ましいところでもあった。お金には困っていないようなので、そのような選択肢も0ではないのだろうが、不満があっても全う出来る人だということを私は知っている。唯、彼女の心が、定職を持って豊かな生活を維持していても、必ずしも仕事=幸福に繋がってるわけではないのだという事実を物語っているようにも思えた。
 
 試験の合否が出るのは十日後。結果をあれこれと思い悩んで過ごすことに意味は無い気がしている。明日から再び仕事を検索しつつ、チャンスを探す。そして思いついたことをひとつでも沢山熟すのだ。
 結果が振るわなかったとしても、今日は心を許せる数少ない友人と再会するために足を運んだのだと思えば、この日が無駄ではなかったことを信じられる気がした。


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