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医学部再受験のリスク① -たくさんの再受験生を見てきた医師の立場から考える

昨今医学部再受験論や東大vs医学部論が話題です。医学部や医者になるメリットは多数語られていますが、あまり触れられていないリスクに関して書いていきます。
大きく分けて無事に入学(編入)/卒業/医師免許取得をできるか、無事に医師になったとしてそうでない場合と比べて金銭面でペイできるかの2つであると考えます。
この記事では金銭面を、早めに働く(稼ぐ)人にリターンで勝つのが難しい理由を主にとりあげます。

1.複利の力
今年は新NISAが始まり投資をする人/額も増え続けています。長期のインデックス投資は基本的に右肩上がりで早期に入金できた人が勝ちます。S&P500の過去10年の平均年利は14.7%と高く、コツコツと資産運用してきた人にスタート地点で大きく差をつけられています。もしFANG+なら5年間で約5倍にに膨れ上がっています。この差を埋め切れるほど稼げるのか考えていくと、社会人をやめて医学部再受験は金銭面でのリスクが大きいと思います。

楽天証券 https://www.rakuten-sec.co.jp/web/fund/detail/?ID=JP90C000GKC6より引用

2.増え続ける社会保険料
少子化は進み、毎年生まれてくる子供は万単位で減っていますがなぜか育児休業給付金は爆増しています。そのためなのか雇用保険料は半年ごとに上昇しています。他にも厚生年金の上限は上昇、国民健康保険も毎年2万円ずつ上昇しています。

https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001148610.pdfより引用

連日子育て支援金が批判されていますが子供子育て拠出金はご存じでしょうか。会社負担が100%のため気付いていない方が多いのですが、設定以来毎年絶妙に増え続け現在は0.36%徴収で据え置きとなっています。これら会社負担も会社側は当然人件費とみなしているので企業の賃上げはやりにくくなっていきます。
これからも減税や社会保険料削減など行わずに、新たな理由を作りさらなる負担増へ突き進むことは間違いないでしょう。当然手取りは同じ給料でも年々減少していくため早めに働いた方が良いリターンを得られます。

3.所得税などの累進課税/基礎控除の消滅
後から年収を2倍稼げるとしても累進課税により手取りは約1.5倍になり2倍にはまずならないです。5倍6倍稼ぐと変わるかもしれませんが年収2600万を超えると基礎控除が消滅したり、医師の平均年収1400万(こちらは議論の余地がありいつか別の記事にしたいと思います/筆者は地方が稼げるとは思いません)を見るに厳しいと言わざるを得ません。
Xで勤務医なのに年収4000万など言っている人たちは専門をある程度極める+一人で完結できる診療科+当直をぶん回して寿命を削っているというレアケースもあり凡人が参考にしてはいけません。当直は想像以上に健康を害します。最近も悲惨な報道がありましたが慢性的な寝不足は事故原因にもなり健康面はもちろん金銭面でもかなりリスキーです。当直明けに病院から帰ってくる車で事故を起こすという話は珍しくありません。
稼げる筆頭としてあげられる美容整形についてです。実際にオンライン説明会を受けましたが、年収2500万から関東以外の出張可能か、勤務先ローテート可能か、休みの日固定は可能か、顔出しやSNS運用できるかなどでいくつもの項目で収入が引かれるシステムでありすべてを満たした条件になります。できない人は年収数百万です。そして美容は自身の見た目や性別も重要です。当然若い人や女性の方が採用に大きく有利です。さらに最近SNSで話題となった追いヒアルの件からわかるように、某大手美容クリニックは無茶なクロスセルやアップセルを推奨するため医者・患者両方にとって勧められません。

4.円安/インフレに対応できるのか
医療業界はデフレや不況に強いと言われ、その恩恵を長らく受けてきました。基本的に内需企業のため円安はコスト面で損です。特に医療器具はダビンチをはじめ、海外製のものが多く仕入れ金額が上昇します。しかもインフレになっていても医療費の増大に対抗するためか診療報酬は下げられる傾向にあります。保険診療は国が値段を決めているため人件費や材料費が高騰しても勝手に値上げできません。

5.結婚/恋愛
再受験で東大理Ⅲに受かったという人はまずいないと思いますので基本的に地方の医学部に行くことになります。先ほどの厚生年金でもそうですが独身男性の寿命は66歳と低すぎます。自分が支払った年金を受け取る、寿命を延ばすためには結婚する必要がありますし配偶者が稼いでくれれば累進課税の観点からもとても有利です。都内は稼ぎ頭が一人だとかなりきついですし、パワーカップルでないと家を買ったりする気にはなりません。昔と比べて年の差婚は減少しており今は女性も同年齢を選びます。若いうちに女遊びなりパートナーを見つけるなりした方が選択肢も多いですし結局人生の幸福度はあがります。理解あって仕事もしてくれる、そのような良き相手を見つけるのは自分自身が若ければ若いほどいいですし、都会にいればいるほどよいです。
東大や京大は女子率が低く、性的資本からつけあがっているという記事を拝見しましたが地方の医学部でも同様、いやむしろ悪いです。東大なら外に出れば若い女性はたくさんいますが、地方は若者がいません。しょうもないブスが上からきて衝撃を受けます。

地方で合コンを設定する時間があれば東京でマッチングアプリをする方がはるかに有意義だったと医師になって上京した筆者は強く後悔しています。地方の医学部で貴重な20代を消費するのか、はたまた都内の非医学部を卒業し都内で就職するのかどちらが自身によっていいのかよく考えるべきです。
余談ですが医師免許が真に効力を発揮するのは病院ではなくマッチングアプリです。Xでは根拠も何も出さずにマッチングアプリマスターを名乗りアフィリンクぶら下げるポストが散見されていますがこちらも別の記事で解説したいと思っています。

以上を踏まえると、すでに大卒で有名企業で働いている方は退職せずに勤め続けた方が最終的な金銭面では良さそうです。

これを元にどういう人が向いているか
すでに資産を形成している人、稼ぐ必要がない人です。
結婚して主婦であり家庭での稼得役割を担っていないというケースは十分な資本を元に私立医大に進学し医師となっているケースが多くみられます。例えばNHKの元アナウンサーはこぞって医師になっています。しばしば批判されている通り金銭面ではなく自己実現のために医師になっているので高齢であっても薄給であっても本人には関係ありません。

次の記事では無事に入学できたときに卒業できるのか、医学部の勉強や医師国家試験は本当に難しいのか(結論簡単です)、よく誤解されている点を考察していきます。

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