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②父が亡くなったとき

亡くなった日は土曜日で、わたしも仕事、子どもたちも学校がある日だった。

母は前日から病院に泊まり込んでいたが、朝連絡してみると、呼吸がゆっくりになってきた、という状況だった。
休んで実家に帰ったところで病院には入れない。
近いうちに何日か休むことになるだろう、そのときに同僚に迷惑をかけないように準備をしよう、と気持ちを切り替えて出勤した。

出勤してから30分もたたないうちに母からの着信に気づいた。それ以外に3回着歴も残っていた。

「お父さん、だめだった」

母の涙声だった。

さぁーっと血の気が引いたのか、かぁーっと頭に血が上ったのか、職場の隅に座り込んで

「お父さんの耳に電話あてて!」

と母に頼んだ。

「お父さん、ありがとうね、お疲れ様ね」

聴覚は最後まで残るらしいと聞いたことがあったので無我夢中だった。
今更思う。職場の片隅とはいえ、声のボリューム大丈夫だったのかな。

父に最期に話しかけた時間は、あとで見た死亡確認時間より20分も前だった。

これは間に合ったということか?

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