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インタビュー撮影の「姿勢」について。

僕にとってインタビュー映像と言われて思い浮かぶのは、ハリウッド映画のメイキング。だいたいが黒バックか撮影現場の隅っこでディレクターズチェアみたいな椅子に座って、キャストやスタッフが映画制作の舞台裏を話す、あの映像。「インデペンデンス・デイ」のメイキングには度肝を抜かれた。模型の爆発に試行錯誤したよ!と無邪気に話すスタッフに心底ワクワクしたのを覚えている。このインタビューは、中学生だった自分の心を大きく動かしてくれたと思う。

2年頃前から色々なところでインタビュー撮影のコツ、みたいな話をする機会をいただいている。ビデオサロン2020年4月号でも6ページにわたって紹介してもらった。わーい!わーい!と心が喜ぶ声が聞こえてきそうだけど、決してそんな浅はかで単純な気持ちではなく、補足的な意味あいも含めて大切にしたい思いを書いておこうと思う。

こちらのWHILLの映像が、事例としてよく見てもらっている映像。ビデオサロンでも取り上げてもらっているのが上の日本版。下は欧州版。

先日、ちょうどインタビュー撮影があった。そこには、アルバイトとして応募してきてくれた子が参加していた。去年ビデオグラファーとして活動を始めたけれど、インタビュー撮影に難しさを感じるらしい。他の人がどんなインタビューをしているのか知りたいと応募してくれた。そんな彼は撮影が終わったあと正直に感想を教えてくれた。
「自分のインタビューとの違いが、よくわからなかったです。」
質問リストを見ても、インタビューのやりとりを聞いていても、自分のやり方と何が違うのか、いまいちわからないと。なるほど。確かにそうなのかもしれない。

ビデオサロンの記事を改めて見返してみると、その気持ちが少しわかる。どの話も、秘蔵テクニック!みたいな特別な方法ではない。掲載した質問リストだって少し考えれば簡単に思いつきそうなシンプルな内容だと思う。活字でそう感じるのなら、実際の現場では、いたって普通のインタビュー撮影に尚更見えるはずだろう。普通、、、その通りだ。読者でもそう感じる人がいると思うし、CM業界の先輩方はどんなことを思うのか、ちょっとビクビクし始めた。やばい。

じゃあ、自分は記事に何を書いているんだろう?
いつも講義で何を教えているんだろう?と、疑問が湧く。

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映像は監督が違えば企画が同じでも、全く違う作品になる超属人的な産物。だから作り方には絶対的な正解はないし、多様であるのが当たり前だと思っている。
だからあえて抽象的に掲げるけれど、僕が記事や講義で伝えているのは「姿勢」なんじゃないかと思う。

インタビューするテーマ、インタビューする相手への向き合い方。コミュニケーション。だって人と人とが向き合って撮影するものだから。作り手のバックグラウンドや性格、意志が、その「姿勢」となって映像に反映されていく。そして、どんな「姿勢」が正しいのか、正しくないかというよりも、自分自身の「姿勢」をどれだけ理解できるているか、をいつも問いているんだと思う。

僕の師でもあるCMディレクターのO君の言葉で、いつも思い出すものがある。
「映像的にどうか、広告的にどうかというよりも、
人類にとってはどうあるべきかをいつも考えています。」

昔から正義感が強く、ヒーローが好きだったらしい。映像は世の中に対して良いものであるべき、という信念を持っているそうだ。とっても共感できる。

また、尊敬するディレクターの1人、Tさんが以前こんなことを話してくれた。
「大石さんは相手の懐に入るスタイル。僕は入らないし、入れないんです。」
Tさんは懐に入れない自分の姿勢を理解し、インタビューを安易に頼らず、心の内面や美しさを表そうと試みている。しかもそれが超上手い。

どちらの「姿勢」も、カメラを通じて空気感を作り出し、きっと映像全体を覆っているはずだ。もはやインタビュー撮影に限った話ではない。
「姿勢」が、映像を作る。

僕の撮影は、懐に入って、その人の内なる想いを引き出そうとする。そういう「姿勢」らしい。フリーランスになった直後にやってみた自分のストレングスファインダーの結果は、「社交性、コミュニケーション、共感性、ポジティブ、個別化」。確かにこの姿勢はあっているかもしれない。ただ、一方で、言葉に頼りすぎているかもしれない、とも思う。映像なんだから言葉に頼るんじゃねえっていう心の声も聞こえてくる。(もちろん、言葉を使わない限り伝えられない情報もたくさんあるけれど)

撮影時に何ミリのレンズを選ぶのかだってきっと姿勢の現れだ。被写体との距離感も変わってくる。Tさんのドキュメンタリー撮影は、懐に入らないけれど、付けるレンズは広角で、望遠レンズは持っていかないと決めているらしい。衝撃的。(この話を聞いた頃に見たTさんの映像、インタビューを20mm前後で撮っていて、これも驚いた)正直に言うと、上のWHILLの映像は、自分もやってみようと70-200mmの望遠レンズと決別し、新しく手に入れた25mm単焦点メインで撮影したものである笑。それでも、インタビューだけは25mmでは撮れなかった。Tさんとは確かに「姿勢」が違う。なのにTさんの映像は、いつもこんなの作りたい!と惹きつけられる。

きっと正しい「姿勢」はひとつではない。作品ごとに意図的に変えるべきものかもしれない。それがいわゆる「演出」というものじゃないのか。
「姿勢」が、映像を作る。

インタビュー撮影の勉強をしたいという人は、、まずは自分の「姿勢」を理解してみることをオススメしたい。僕自身も、自分が持つ「姿勢」への理解を更に深めて、作品ごとに「演出」へと昇華できるようトライしていこうと思う。
これがまたほんと難しいんだけどね。。。

映像は奥が深い。だから面白い。

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Takehiro Oishi
映像ディレクター/ ビデオグラファー。
「姿勢」と言うなら、まずは猫背を治したいです。
仕事ではドキュメンタリー広告が中心。ライフワークは子どもの成長記録映像やブライダルビデオづくり。

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