見出し画像

何を優先して生きていくかということ

わたしの母は、なんでも手作りしてくれる人でした。
わたしたち子供の食生活について、すごいエネルギーを注いでくれる人でした。
食生活だけではないですね。日々の人生経験をいかに豊かにするか、そのことに真剣に本気で取り組んでくれる人でした。

我が家の庭は家庭菜園の野菜でいっぱいでしたし、果樹が数種類植っていて、果物も少しですが自宅で採れました。
すごかったのは、数年間めんどりを7羽育てていたことです。
大工の娘だった母はなんでも作る人で、我が家の食器棚も本棚も母のお手製だったのですが
自分で材木を手に入れてきて、1人だけで大きな鶏小屋を建ててしまい
そこでめんどりを育ててくれました。
昼間は庭に放して(決して外に出て行ったりしないから不思議です)虫や草を食べ
小屋の中では与えた穀物を食べていました。
そのめんどりが毎朝産んでくれる卵を、わたしたち子供は毎朝食べることができたのです。
そんな贅沢な暮らし、あるでしょうか。

わたしの理想の母親像は、自分の母です。
子供たちをチビ扱いせず、幼い頃から物事の本質を考えるような機会を与えてくれ
物を大切にし、無駄な物を買い与えず、我慢することを教え、努力して手に入れることを教え
人を思うことを教え、愛とは何かを行動で示してくれ
人からどう思われるかよりも、子供たちにとって何が有益かを考えて堂々と生きる人でした。(今も健在です(笑)!)
他人のために尽くし、周りの人を愛し、手を差し伸べることを恐れず
上に書いたように、子供たちの食生活を含めた日々の遊びや経験も、いかに豊かにするか
いつも全力で考えてくれるエネルギッシュで深い愛の人でした。

繰り返しますが、わたしの理想の母親像は、わたし自身の母です。
けれど、今の自分は、母には遠く及ばず、悩むことばかりです。

母は長く専業主婦でした。
わたしよりずいぶん早く子供を産んだことも、今のわたしとの違いに関係がなくはないと思います。
わたしも家庭菜園を始めましたが、とても母のように手広くはできません。
しかもついに今年は、植えることをやめてしまいました。
仕事の責任範囲が広くなり、シフトの時間も大幅に増やしたので
家のことにかけられる時間が激減してしまったのです。

毎晩欠かさなかった絵本の読み聞かせも、しなくなってしまいました。
夕飯も、テイクアウトが増えました。
作っても、丼ものだけとか、彩り豊かに3品はおかずを作っていた以前の食生活とは、激変しました。
子供と遊ぶ時間も減りました。
子供が成長して、兄妹だけで遊べるようになったこともありますが
関わる時間が減っているな、と実感しています。
今のわたしは、理想の母親像から遠ざかるばかりです。

原因はわかっています。
まず、時間がありません。
残業はほぼないとは言え、フルタイムで働いていれば、出勤前も退勤後も時間との戦いです。
週末は溜まった家事に追われます。
わたしは家事育児を90%ワンオペでこなしているので
自分の自由な時間はほぼありません。
体力もどんどん落ちているのを感じていて、運動したいのですが
いったいいつ運動すれば(笑)?という状態です。
子供たちが眠った美しい寝顔を見つめながら
ごめんね…
と何度呟いたことでしょう。

けれど、わたしは今のこの仕事を愛しています。
お金を稼ぐために渋々イヤイヤ出て行く仕事ではなく
この仕事を誇りに思う、と感じながら出勤できる仕事に就けたわたしは、なんと幸せ者なのでしょう。
だから、続けたいのです。
お客さまとお話しするあの短い時間の積み重ねこそが、わたしの生きる力になっているからです。

フルで働いて、野菜を育てる元気もなくなり
絵本の読み聞かせすらやめてしまい
子どもの話も常に手を動かしながらの「ながら聞き」状態のわたしは、母として、子どもたちに何を与えてあげられているのでしょう。
お誕生日には毎年必ず手作りしていたケーキもいつの間にかケーキ屋さんに。
端午の節句もひな祭りも七夕も、それにちなんだ楽しいご飯を準備していたのに
何にもしてくれなくなっちゃったね、と長女からポツリと言われてしまいました。

働く人ならきっと誰でも、ライフワークバランスに悩みながら日々を過ごしていることでしょう。
仕事をしながら、わたしの母のような家事育児をすることは、到底無理かもしれません。
子供が1人だった時は、かなりがんばれていた気もします。
2人、3人と子供が増え、仕事の荷重も増えていく中で
わたしは何を優先して生きていくのか
常に頭を悩ませています。

それでも、エプロンをキュッと締めて、思いきり伸びをして
よし、行くぞ!と気合を入れてからバーカウンターに入ると
この仕事をできる喜びで胸がいっぱいになるほど、カフェの仕事を愛しています。

わたしは今は母のようにはなれていないけれど
愛する仕事をする背中を見せながら
できる限りの愛情深い母を、模索し続けようと思います。
それでもやっぱり、もっともっと、子供に寄り添いたい。
まずは読み聞かせとご飯から、改善かなぁ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?