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クラフトを研究にしてみた

マウイは眩しくデンマークの冬の薄い光に慣れていた目には痛かった

2020年初の学会発表は、"HICSS-53”で幕開け。それも初日の第一セッションの一人目の発表だった。今回の研究の内容は、以前から何度か言及しているのだけれども、「伝統技術をいかに情報システムが支援できるか(How information system can support traditional crafts knowledge and skill transfer?)」ということを考えた内容だ。タイトルは、"Designing Knowledge Management System for Supporting Craftsmen’s Collaboration beyond Temporal Boundaries”。数年リジェクトされ続け、その度に構成を練り直し、修正し、ようやく受理された思い入れの深い論文だ。諦めずに日の目が見られてよかった…。

HICSSは今年で53回目、個人的には3回目。毎年年始にハワイで開催される情報システムの学会で、場所がマウイになったり、ビックアイランドになったりと島を移動する。情報システム分野のそれなりに評価されている学会で、今年の採択率は45%ぐらいだったみたいだ(未確認)。場所が場所だけに人気は高く、米国だけでなく遥々欧州からの参加者も多いのはわかる気がする。米国の学会らしくスポンサーもきちんとついてカンファレンスディナーなどもゴージャスで(そして参加費も高い)、何よりも発表の際のインタラクションが重視されていて地に足ついてるところが好感が持てる。発表時間の半分がQ&Aに当てられるので、フィードバックがたくさん貰える、そして、建設的な議論を心掛けるということがトップダウン指令となっているのか、雰囲気がいいのがこの学会の特徴だ(場所の効果も大いにあるとおもうが)。

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(ハワイ学会なので正装のハワイアンシャツやビーチサンダルが基本)

学会は、発表するところ・発表を聞くところ、と思われがちだけれど、実は、関心が会う人とのネットワークを広げたり自分の考えを推考したり、自分が好きな論文を書く人と顔見知りになり友情を深めおしゃべりをして共同研究の可能性を探ったり、という側面が実は重要だったりする。特に今回は、知っている人が誰もいない状況で参加したのだけれども、ハワイの緩い雰囲気に感化され、セッションチェアと仲良くなって色々とペーパーや私の研究に使えそうな理論を教えてもらったり、トルコの伝統工芸に詳しいオランダ在住トルコ人カップルと知り合いになったり、三国志で中国人と盛り上がったり、短いけれども濃い時間を過ごすことができて、満足、エネルギー充満。

伝統技術や伝統工芸は、最近特に関心を持っている分野で、学会発表数日前にもデンマーク・コペンハーゲンで日本の煎茶イベント青い目の日本茶の人Per Oscarさんと同志と一緒に実施したし 、これからも関心を持っている人たちに日本に実際に来てもらい物づくりを見て・体験してもらえる仕掛けを作ったり、日本と北欧のクラフトアーティストの橋渡しをしたりしていく予定。

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(デンマークでも変わらず笑顔が素敵なオスカルさん)

暗黙知によって成り立っている多くの伝統的な技術を守るためにITができることは、きっとたくさんある。マウイでは、同じ想いを持った人たちに複数出会えて、新しい方向性がいくつか見えてきた。

クラフトとITの交差点に関心がある方、ぜひご連絡を!

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